どんな会議も活性化させる
3つの方法
続いて、会議の雰囲気や空気感をコントロールする方法です。退屈しがちな会議も、やり方次第でいくらでも活性化できます。ここでは3つの方法をご紹介します。
まず1つめは、会議の人数を制限することです。
発言のメンバーが固定してしまうなど、会議があまり盛り上がらないときは、人数を思い切って絞りこんでみるのも1つの手です。
会議もメンバーが増えてくると、自分が話している時間よりも他の人の発言を聞いている時間のほうが、どうしても長くなります。誰かがしゃべっているときは、基本的に話し手一人に対して他の全員が聞き手に回るので「1対n」の状態です。「1対n」の状態でコミットメントすれば、本人にはプレッシャーがかかって成長が加速するというメリットがありますが、「n」が大きくなればなるほど、メンバーの当事者意識が薄れていくというデメリットも生じてきます。
そのバランスがとれるのは、メンバーが5人まで。5人までなら、みんなだいたい均等にしゃべってくれます。しゃべらないで聞いているだけでは、場がもたないからです。大勢の前だと黙ってしまいがちな人でも、5人までの少人数グループの中なら、それほど緊張せずに自分の意見を口にできるはずです。それ以上の人数になると、どうしても一部の人だけに発言が偏ります。
では、もっと大勢の会議、たとえば25人のときはどうするか。
これはアクティブラーニングの羽根拓也さんに教えていただいた方法なのですが、5人ずつテーブルを分けて、それぞれ10分で結論を出してもらいます。次に、全員をシャッフルして、もう一度5人ずつのテーブルに分かれて10分で結論を出してもらうのです。この場合、5×5の後半戦のメンバーは全員違うテーブルから集めます。そこで、「前半の結論はこうなりました。ぼくはこう思います」と5人全員が発言してから議論を始めてもらえば、前半戦の結論を踏まえて、さらに議論を深めてもらうことができるのです。
これを、25人で一斉に議論しようとすると、発言するのはせいぜい5人くらい。残りの20人はずっと聞き役に回ることになります。これでは、マッシュアップの効果もあまり期待できません。5人ずつの少人数グループに分けたほうが圧倒的に効率がいいし、議論の幅も広がり、ずっと深い結論を出すことができます。
2つめのポイントは、会議では「事」と「人」を切り分けるということです。これは、「誰が言っているのか」ではなく、「何を言っているのか」で判断する、ということでもあります。とくに日本人は、議論しているはずなのに「事」を語らず「人」で語ってしまうというミスを犯しがちです。
議論というのは1つの目標に向かって意見を出し合うもので、違う意見があるから盛り上がるし、結果として当初の自分の想定よりもずっとよいゴールにたどり着くこともあるわけです。ところが、日本人同士で議論していると、ついついお互いに相手の人格と向き合ってしまって、違う意見の人、自分の意見に反対する人は「敵」になってしまう。
自分と同じ意見かどうかと、相手を嫌いになるかどうかはまったく別の話です。違う意見の人と一緒に高みを目指すのが本来のあり方なのです。
3つめは、会議のメンバーにリラックスしてもらうことです。
多様な意見を引き出したければ、会議の参加者には、「自分の発言をきちんと聞いてもらえる」「意見に合理性があれば、きちんと採用してもらえる」と思ってもらう必要があります。
「そんなのダメだ」と頭ごなしに否定したり、「だいたいお前は……」とすぐに人格攻撃したりする人がいると、メンバーが委縮して発言が制限されてしまいます。そうなると会議の生産性はガタ落ちなので、要注意人物をうまくコントロールする必要があります。
ちょっとピントが外れたおバカな発言も、「そんな考えもあるよね!」とまずは受け入れる。こうした雰囲気からもたらされる参加者の安心感を、グーグルでは「心理的安全性」と呼んで重視しています。「心理的安全性」さえ確保されれば、普段あまり発言しないメンバーの口もだんだんなめらかになって、ポテンシャルを存分に発揮できるはずです。