金儲けよりも、人儲け

なぜ、お金持ちは「失敗のない成功は危険」と考えるのか?吉田潤喜(よしだ・じゅんき)
1949年12月7日、7人兄弟の末っ子として京都で生まれる。 アメリカにあこがれて、1969年1月24日に単身渡米する。 波乱万丈のアメリカ生活をサバイブした末、自家製秘伝のタレをベースにしたヨシダソース(正式名称:ヨシダグルメのたれ)を生産販売してアメリカンドリームの体現者となる。 米国の中小企業局、Small Business Administration(SBA)が選ぶ全米24社の中に、FedExやインテル、AOL、ヒューレットパッカードなど並んで「殿堂入り」を果たす。 2005年にはNewsweek誌(日本版)「世界で最も尊敬される日本人100」に選ばれる。 現在、ヨシダグループとして18社を抱え、グループの会長職務と地元料理番組のレギュラー出演、各地での講演から、日本国内での様々な番組出演・各メディア取材などこなし、世界中を飛び回る日々を送っている。 (Photo by 森藤ヒサシ)

本田 8番目に開く手紙は、【人間関係】です。私は、人間関係こそ、「最高の人生を実現してくれる魔法の杖」だと考えているんです。
 家族、友人、仕事関係でいい人間関係を持っている人は、幸せに毎日を過ごすことができます。人間関係がスムーズになれば、人生の多くの物事が、驚くほどスムーズになります。
 母親との和解をきっかけに職場の女性ともうまくいくようになり、昇進につながった。
 兄弟への嫉妬を手放せたことで、今まで競争していた相手と協力できるようになり、共同キャンペーンを行って、大成功した……。
 人生を大幅に好転させるきっかけは、すべて、人間関係にあると思います。

吉田 たしかに、「人生の課題」も、「人生の喜び」も、すべてが人間関係にあらわれている気がしますね。

本田 人間関係は、大好きなことをして生きるうえで、もっとも重要なポイントではないでしょうか。仮に、私たちの心の中に、「どんな結末でも自分で選択できる映画」のソフトがインストールされているとすると、素晴らしい人に出会って、人生の素晴らしさを体験したら、幸せで豊かに自分らしく生きる映画がスタートする。
 反対に、人の足を引っ張る意地悪な人に出会い、自分もやり返してやろうと思ったら、不幸な映画がスタートします。どちらの映画がスタートするのか、それを決める鍵となるのが人間関係なんです。

吉田 僕はよく、「金儲けよりも、人儲け」という言葉を使うのだけど、「人を好きになり、人から好かれる人」が本当の成功者だと思う。

本田 「人儲け」というのは、「人を使ってお金儲けをする」ということではなくて、人とのつながりを大切にする、という意味ですか?

吉田 そうです。簡単に言えば、「人に好かれる」ということ。人脈とかネットワークといった冷たい関係ではなくて、お互いのことが大好きで、「この人のためになりたい」「あの人と一緒にいたい」と本気で思える関係が「人儲け」です。 僕がこれまでしてきたことは、じつはお金儲けではなくて、「人儲け」なんですよ。お金を儲けることしか頭になかったら、僕の事業は成功しなかったでしょう。
 アメリカの「フレッド・マイヤー」というスーパーの社長とゴルフをしたとき、スタート直後から2人でビールをしこたま飲んで、6ホール目ですでに酔っぱらってしまった(笑)。ラウンド中も、その後のパーティーでも、商売の話を一切せず、お酒を飲みながら楽しい時間を過ごしただけ。
 それなのに、1ヵ月後、「フレッド・マイヤー160店舗すべてにヨシダソースを入れる」と連絡が入ったんです。正直、これには仰天しましたね(笑)。もし僕がゴルフ場でソースを売り込んでいたら、警戒されて、全店舗納入の話はなかったでしょう。
 これが、「人儲け」です。こんな例はアメリカでも日本でもたくさんあります。人とのつながりを大事にしていれば、お金だって自然とついてくる。「コストコ」にソースを置いてもらえたのも、「ドンキ・ホーテ」に置いてもらえたのも、「人儲け」の結果なんです。