購入条件はかなり厳しい。現在、要求されているの「上海市に実際に居住していること」「7年以上継続して上海戸籍を保持していること」「現居の一人当たりの平均住宅面積が15平米以下であること」「1人当たり月間可処分所得が2300元以下であること」などというものだ(2011年末の時点で、経済適用住宅の購入基準は、1人当たり月間可処分所得が2300元から2900元に、1人当たり財産保有額が7万元から9万元に引き上げられた)。

 この条件が示すのは「もともと収入の少ない世帯」に住宅を購入させるというものだ。上海にはいわゆる月収3000~1万元未満の中間層と呼ばれる層が存在するが、結局、本当の意味での実需層である彼らは、ここでも置き去りにされた形だ。

 だから問題も多い。生活が苦しいのにムリをして購入したばかりに招いてしまった不幸という例では、「購入後ローン申請者が職を失い、返済が滞り、銀行の差し押さえを経て立ち退きに遭った」というケースがある。差し押さえに憤った家族が石油を浴び、憤死した事件もある。

 他方、低所得者層のための住宅でありながら、駐車場にはベンツやBMWといった高級車が並んでいることも問題視されている。地方政府の役人が手に入れてしまっているケースもあれば、彼らのコネを利用して購入しているケースもある。

 購入後5年を経れば転売でき、転売後の売却益の7割を得られる(3割は国家)ことから、このうまみを狙う“非低所得者層”が忍び込んでくるようだ。

 上海の大手法律事務所は「実際の購入者は、本当に住宅を必要とする世帯であるというよりはむしろ、申請書類を捏造できる人脈を持つ特殊な購入者である可能性が強い」と指摘する。購入条件を細かく設定することで、圧倒的多数の購入希望者をふるい落とす、そんなプロセスがかえって腐敗を呼んでいるという。

消えてしまった
最低所得者層への住宅対策

 中国にはもともと、1994年から始まった「国有資産を払い下げる」という政策があった。かつて国有企業に雇用されていた労働者には、住宅の実物分配が行われた。