喫煙が健康上、プラスになる点を無理に探しても一つも見つかりません。脳を活性化させる、イライラを止める、という側面がたばこにはあると言われますが、そのためにたばこを続けていると、認知症や精神疾患の発症が大幅に増えてしまうという客観的事実が次々と示されるようになりました。

 そして、何よりも、喫煙者の周囲の人が吸うはめになる副流煙が健康を著しく害することが示されるようになったことも、医師の喫煙を止める大きな理由であったでしょう。喫煙者自らが吸う主流煙よりも、周囲の人が吸いこむ副流煙の方が、ニコチン・タール・一酸化炭素などの有害物質が3~4倍多いということが示されたのです。

 喫煙により自分だけが体調を崩すのであれば、医者の不養生で片付けられるかもしれませんが、人の病を治し健康を管理する医師が、自ら周囲の方の健康被害を作り出しているとしたら、それは職業上の背信行為でもあります。受動喫煙による弊害が広く認知されるようになったことで、医師の禁煙が一斉に進んだと考えられます。

たばこの毒性、受動喫煙による病気は深刻
副流煙の方が主流煙よりも毒性物質の量が多い

 たばこの煙には200種類上の有害物質が含まれ、発がん性物質は50種類以上にも及びます。有害物質として有名なのは、ニコチン、タール、一酸化炭素で、それぞれ、血圧を上げ、発がん性があり、血液中の酸素の運搬能を低下させます。その他にも、アセトン、ヒ素、トルエン、カドミウムなどの有害物質が含まれます。ニコチンはご存じのように依存症が強く、禁断症状の強さや離脱の難しさは麻薬以上とも考えられています。

 先に述べた受動喫煙の被害は、本来はたばこを吸いたくない、吸う必要のない人が、自分勝手に吸っている人の何倍もの有害物質を取ってしまうことで引き起こされます。妊婦さんや乳幼児などたばこの害に対して脆弱な人たちが犠牲になりやすいことも問題視されます。

 受動喫煙により吸うはめになる副流煙により、大人が被る重篤な疾患は、脳卒中・心筋梗塞・肺がん・慢性閉塞性呼吸障害・早産・低体重児出産など、子どもが被るのは、肺炎・喘息・中耳炎・乳幼児突然死症候群など軽視できないものばかりです。

 繰り返しますが、主流煙よりも副流煙の方が毒性物質の量が極めて多く、たばこを吸っている人は、自分が被る健康被害の何倍ものダメージを周囲の人に与えていることになります。

 さて、ここからは、そんなたばこが発症に強く関与する代表的な疾患を見ていきましょう。