1つ目は、新規事業開発など成長戦略の施策を企画する際、顧客の顕在ニーズを直接聞き、それを鵜呑みにしてしまうことだ。これは部品事業において、特定の完成品メーカーからの要求を聞くことが、一つの成功要因となっている業界特性に関連している。もちろん顧客の要望を直接聞くことは悪いことではないが、 顧客企業のある担当者の意見が必ずしも顧客企業や業界全体の声を反映しているとは限らない。不特定多数の顧客へ商品を販売する完成品メーカーが、常に数多くの顧客の声から真のニーズを想定するというプロセスを踏んでいるのはそのためだ。特定の顧客、担当者の意見が全てではないという認識を持ち、顧客の声をさまざまな角度から検証するスタンスが不可欠だ。また、顧客の声を直接聞くだけでは、顧客が気づいていない潜在ニーズに適合する価値を創造できず、他社と類似した企画しか立案できない。

 2つ目は、「顧客のニーズ」と言ったとき、製品ニーズのみを考えてしまうことだ。顧客ニーズは、状態ニーズ(このような状態になりたいというニーズ)、行動ニーズ(ある状態になるために必要な行動を行いたいというニーズ)、製品ニーズ(ある行動を行う際に助けとなる道具へのニーズ)に分類できる。部品メーカーはこのうち製品ニーズへの意識が強く、製品のプロトタイプを開発しなければ、顧客にニーズを確認できないと考える傾向がみられる。これは顧客である完成品メーカーを経由して製品ニーズの形で顧客ニーズを確認できるという特性に関連しているが、本来、製品ニーズは行動ニーズや状態ニーズがあってこそ存在する。まずこれらのニーズを探索するという考えを持つことで、企画の検証方法や検証タイミングが変わるだろう。

 3つ目は、ビジネスモデルの検討不足だ。先の例に挙げたように、完成品を製造・販売する事業を行う際に必要となる販売、広告宣伝、ネーミングなどの機能の構築検討が不十分なケースが多く見られる。これは顧客である完成品メーカーに製品を直接納入するというシンプルなビジネスモデルの経験しか持っていないという特性に関連する。「売れる製品をつくるまえに販売方法などを考えても意味がない」「良い製品があれば、売りたい人が自然と出てくる」といった考えで、まずは製品の開発だけに注力するというメーカーが少なくない。しかし、新たな業務機能を構築する方が、製品開発以上に大きな投資となる場合もある。ビジネスモデル全体の検討を早期に行い、どの業務機能の構築が重要課題になるかを見極めておく必要がある。