少年法の壁で真相は不明だが、当時、卒業生の7割が東大に進学した超名門の灘高校に行けと父にうるさく叱咤され、長男が反発していた、などと報じられた。故人は学歴コンプレックスが強く、それを息子に転嫁したのだろうか。つらい事件だった。
 
 余談だが、半世紀近く前、筆者が西宮市の男子高校に通っていた頃、学校で将棋がはやり、授業中も紙将棋を回していたことがあった。大山康晴十五世名人はじめ、内藤国雄、有吉道夫、灘蓮照など西日本の棋士が強かったこともある。

 小生は敗戦ばかり。勉強がダメなのは「水泳部の練習がしんどいからや」「あの先生は嫌いだから」とか言い訳ができた。しかし、将棋のようにルールがシンプルでマージャンのような偶然の要素もない勝負では言い訳が立たず、「自分は頭が悪い」と劣等感を持つしかない。ある意味、思春期の少年にとっては残酷なゲームかもしれない。

「女性棋士」と「女流棋士」とは?
将棋女子を取り巻く特殊な事情

 最近、何かと話題になる「将棋女子」についても見ておこう。女性については「女流棋士」は存在するが「女性棋士」は存在しないことをご存じだろうか。

 そもそも棋士とは日本将棋連盟に属して将棋を指す人のことを指すが、奨励会の三段リーグを勝ち進んで四段にならないと棋士とは認められない。そして男女問わず、26歳までに四段になれなければ、奨励会から退会になるという規則があり、棋士への夢がついえてしまう。

 近年、アマで抜群の成績を持つ者にはプロ編入試験ができたが、合格者は瀬川晶司五段(48)と最年長の41歳で夢を果たした今泉健司四段(44)だけだ。

 現役棋士は160人足らずというハードルの高さもあり、これまで棋界に「女性棋士」はいなかった。「出雲の稲妻」と呼ばれ女流棋士最強の里見香奈三段(26)が、女性初の棋士(奨励会四段)になれるかと期待されるなか、夢かなわずにこの3月で奨励会退会となったことは記憶に新しい。