キャッシュレス化が進めば、単に社会的なコストの削減のみならず、取引データの蓄積を通じたビッグデータの観点からも有用であることを考えると、諸外国と比べてそれが圧倒的に遅れている日本では、政府が率先してQRコード決済の普及などをどんどん進めなくてはならないはずです。

 それなのに、未来投資戦略2018では、2027年にキャッシュレス比率を倍増して40%にすることを目標としています。10年後にようやく今の米国並みを目指しているだけであり、これではあまりに志が低すぎるのではないでしょうか。

 そうなってしまった原因は、おそらく既存の様々な決済ビジネスへの影響を考えてしまったからだと思いますが、それは表現を変えれば、既得権益の抵抗を恐れず既存の秩序を破壊するという“創造的破壊”の創出を回避しているだけです。

 霞が関がそうした行動に出るのはいつものことなので、しょうがないにしても、それを打破して改革を進めさせるのが官邸の役割であるにもかかわらず、官邸も改革をやる気がないからこそ、キャッシュレス化についてもこのような情けない内容になってしまっているのではないでしょうか。それで「Society 5.0」とか言われても虚しいだけということさえも、わからなくなっているのかもしれません。

官邸は成長戦略に
もっと真面目に取り組むべき

 スペースの関係もあるのでシェアリングエコノミーとキャッシュレス化についてだけ説明しましたが、その他にも「未来投資戦略2018」は突っ込みどころ満載で、安倍政権のこれまでの成長戦略と比較しても際立って出来の悪い内容となっています。

 ちなみに、この「未来投資戦略2018」の本文は、なんと140ページに及ぶ退屈な作文となっています。霞が関の各省庁が第4次産業革命の名の下でやりたい政策を羅列しただけで、哲学も信念も戦略性も何も感じられない、霞が関の自己満足の塊のような成長戦略です。これを一読すれば、安倍政権の成長戦略がいかに終わっているかを実感できると思います。