日本航空(JAL)がLCC(ローコストキャリア)新会社設立に関して、2010年の経営破綻時に退職・解雇した人材を雇用対象にする方針を打ち出したことが分かった。人手不足と労働争議を解決する“一石二鳥”作戦はうまくいくのだろうか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)
「LCC新会社が雇用創出」「もう一度JALで活躍を!」。本誌が入手したJALの労働組合のビラには、こんな文言が喜々として躍っている。
5月14日、JALは国際線中長距離LCCの新会社を設立すると発表した。成田国際空港を拠点に、2020年春から就航する。具体的な路線は未定だが、飛行時間10時間前後のアジア、欧米を含めた広範囲を見据える。
同日、JALは各労組にもこうした概要を説明。しかしその席上、記者会見では一切語られなかったある重大発言が飛び出した。人事部門の責任者が、「従来の労務方針を大幅に変更する」と話したのだ。
その内容は、10年の経営破綻前後に実施した特別早期退職、希望退職、整理解雇した運航乗務員(パイロット)を、LCC新会社の採用対象にするというもの。併せて、これまで早期退職者と希望退職者はJALグループへの再就職を禁止していたが、パイロットに限らず全ての職種で、その禁止措置を撤廃するという。
破綻当時、JALと企業再生支援機構は約1万6000人を削減する更生計画案を提出。希望退職を3度募った。ところがパイロットと客室乗務員(キャビンアテンダント、CA)は応募が計画を下回ったことを理由に、計165人の整理解雇に踏み切った。
これに対して「年齢や病歴を理由に解雇対象者を選ぶのはおかしい」「人員削減は計画通り進んでいたはずだ」などと訴える「JAL不当解雇撤回争議団」が結成され、一部労組が支援。JALと争議団・労組は長年にわたって、複数の裁判を繰り広げてきた。