子どもを性犯罪加害者にしない教育は可能なのか。写真はイメージです

子どもの頃、アルコールや薬物、タバコの危険性について教育を受けた経験のある人は多いだろう。交通安全教育は一般的だし、免許を取得する際には事故を起こさないための技術や心得を叩き込まれる。一方で、「人を性的に傷つけないための教育」を受けたことがある人はどれほどいるだろうか。実際に性犯罪加害者は世の中にいる。加害者にならないための予防教育は、果たして可能なのか。(取材・文/小川たまか)

性暴力に関する教育は
タブーなのか

 5月に報じられた、新潟県の小学生誘拐殺人事件。また、昨年の千葉県松戸市で起こった事件については、現在も裁判が続いている。こういったニュースが報じられるたび、どのように子どもを守ることができるのかが議論になる。ネット上でも、子どもを持つ親たちから不安の声が漏れた。一方で一部の保護者からは、「子どもが加害者にならないために親ができることはあるのか」といった疑問も見られた。

 ある女性は子どもの頃から、何度も性被害に遭っていた。けれど、義務教育でもそれ以降でも、子どもを狙う性犯罪があることや、被害に遭ったときに誰に相談すればいいのかを教えてくれる人はいなかった。

 彼女から、こんな風に言われたことがある。

「10代の頃、『友達や先輩から薬物をやってみない?と誘われたらどうやって断ればいいか』という授業を受けたことが何度もありました。お酒やタバコはダメっていう教育もあった。でも私の場合、薬物やアルコールに誘われたことは一度もありませんでした。強制わいせつやストーカーなど、性被害には何度も遭っていたのに、それについての教育は何もなかったことが、今でも変だなと思っています」

 さらに言えば、薬物やアルコールについての依存の可能性は子どもにも教えるし、ふとした機会に「やってみたくなる」瞬間があることを前提に予防教育をする。