見知らぬ相手への性犯罪、
「させない」教育はあるのか

 一方で、見知らぬ相手への性加害を行うケースの場合はどうだろう。知っている相手への行為と違い、こちらは最初から、相手の同意を確認するつもりがない。レイプや強制わいせつのほか、痴漢や盗撮を繰り返す……。こういった加害者にならないための予防教育は、あるのだろうか。

『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)の著者、斉藤章佳さんは、精神保健福祉士・社会福祉士としてこれまで1500人以上の性犯罪加害者の治療教育に関わっている。そのほとんどが、見知らぬ相手への性暴力を繰り返し行ってきた加害者だった。

 斉藤さんは、性犯罪を繰り返す加害者は加害行為に依存しており、自分の意志だけではやめられない場合があるからこそ「治療」や「教育」が必要であると著書で説明している。こういったケースの加害者の予防教育について、斉藤さんは言う。

「これをやれば性犯罪者にならないという具体的な方法論が確立されていれば、世界中でもうそれが行われているはずです。そうでないのは、やはり有効と実証されている予防教育がないから」

 逆に、「親の育て方が悪いから性犯罪の加害者になるというエビデンスもない」と言う。

「クリニックでは、保護者の方にもお会いします。アルコールや薬物依存などの物質使用障害の場合、たとえば過去に虐待を受けていたとか、DVがあったとか、親にもアルコール問題があったとか、機能不全家族というような傾向がある。一方で性犯罪の加害者の場合、今のところ明確に分かっている顕著な傾向はありません」

加害者の多くに
いじめられた経験?

「保護者の中でも特に母親は『自分の育て方が悪かった』と自責の念を抱きやすい。父親の場合、中には真面目に息子と向き合う人もいますが、基本的に子育てにあまり関わっていない人が多いので母親に向かって『お前の育て方が……』と責める傾向にあります。でも、親子関係が良くて、何の問題もない家庭環境で育った子どもが性犯罪加害者になるというケースも、とても多いのです。だから余計に、『まさかあの子が』と親が困惑する」