パラグアイ戦の岡崎慎司
パラグアイとの親善試合でプレーする岡崎慎司 Photo:AFLO

4年に一度のサッカー界最大の祭典、ワールドカップがついに開幕。日本時間15日未明の開幕戦では開催国ロシア代表が5‐0でサウジアラビア代表を一蹴し、首都モスクワのルジニキスタジアムを埋めた約7万8000人の大観衆を熱狂させた。19日に強敵コロンビア代表とのグループリーグ初戦(サランスク)を迎える日本代表は、いかにして戦うべきか。西野朗監督(63)の就任3試合目にして待望の初勝利となった12日のパラグアイとの大会前最後のテストマッチで、約9ヵ月ぶりに先発した32歳のベテランFW岡崎慎司(レスター・シティ)が見せた献身的かつ泥臭いパフォーマンスが、グループリーグでの勝ち点獲得へのヒントを示してくれた。(ノンフィクションライター 藤江直人)

2010年W杯の岡田ジャパンを
彷彿とさせた「一人の侍」の姿

 日本代表監督としてワールドカップの2大会で指揮を執り、2度目だった2010年の南アフリカ大会ではチームをグループリーグ突破に導いた岡田武史氏(現JFL・FC今治オーナー)が残した名言の中で、強く印象に残っているものがある。

「運は誰に対しても、普通に目の前に流れている。それをつかみ損ねたくないからベストを尽くす。一本のダッシュに、一本のシュートに、常にベストを尽くすんです」

 岡田氏が横浜F・マリノスを率いた2003シーズン。指揮官が飛ばしたこの檄の下、いっさいの甘えや妥協が排除されたチームは、ファースト、セカンド両ステージを制覇。史上2チーム目の完全優勝を達成すると、2004シーズンのファーストステージでも頂点に立つ。さらにはセカンドステージ覇者、浦和レッズとのチャンピオンシップを制して連覇を果たしている。

 テクニックを駆使した華麗な勝利というよりは、泥臭さと献身でもぎ取った白星が目立った2年間の戦いぶりは、そのまま南アフリカ大会を戦った岡田ジャパンへと受け継がれる。

 極度の不振もあって開幕直前に大黒柱が中村俊輔から本田圭佑へ、ゲームキャプテンが中澤佑二から長谷部誠へ、守護神が楢崎正剛から川島永嗣へ、システムが[4‐2‐3‐1]から[4‐1‐4‐1]へ、そして戦い方がボールポゼッション型から堅守速攻型へと、それぞれ大きく変更された。

 岡田氏の決断は半ば開き直ったかのように見えて、実は目の前に流れている運を強引につかみ取るための方策だった。果たして、カメルーン代表とのグループリーグ初戦を本田のゴールで制した岡田ジャパンは、デンマーク代表との最終戦でも快勝。開幕前に浴びせられていたブーイングを、称賛の嵐に一変させた。

 ワールドカップ・ロシア大会が開幕した今になって、なぜ15年も前の岡田氏の言葉を思い出したのか。くしくも南アフリカ大会前と同じく、未曽有の逆風にさらされていた西野ジャパンを一本のダッシュでも絶対に手を抜かない、例えるなら「侍」をダブらせる選手が奮い立たせたからだ。