仕事を客観視できている人は決断できる

 通常、修羅場をくぐった経験の数と言われるが、何かそれだけではないような気がする。なぜなら、若くても胆力のある人はいるのだから。

 私が一つ仮説として持っているのは、仕事を客観視できているかどうかの差ではないだろうかということだ。

 仕事に全人格をかけ、それが上司から批判されると、自分が批判されたように感じる人がいる。そんな人は、どうしても、最後の決断をするのが遅れがちになる。

 一方、仕事は仕事、ちょっとしたゲーム感覚を持ち、仕事を客観視できている人は、自分の判断を信じて、決断ができるのではないか。

 しょせん、仕事は仕事、仮に上司から何か言われても、直せばいいと開き直ってしまえば、仕事の結果にたどりつくのが早くなる。

 それに、上司の立場を考えたら、環境の動きの速い今日、結果を出すのが早いことを一番評価している。

 上司から見れば、あなたの出す結果は、上司の判断の材料にすぎないのだから、どんどん上司の決断を仰ぐべきなのである。

 こんなふうに考えてもらえば、いらぬ悩みが消えるのではないか。

 もし、読者の皆さんの中に、なかなか決断ができなくて、仕事を終えるのが遅くなっている人がいたら、仕事から一歩離れて、それを客観的に見てほしい。

 また、自分の出す結果は材料だと開き直ってもいい。

 そうすれば、割とあっさり決断ができるようになるはずだ。

実行段階でこそ細かいところにこだわる

「悪魔は細部に宿る」というアメリカの言葉がある。

 これは、細かいところにこそ落とし穴があるという意味だ。

 先ほど、「細かいところにはこだわるな」と述べたが、それは戦略構築段階での話。

 戦略は状況に応じて修正するものだから、細かいところにこだわっても仕方がないということだ。

 しかし、戦略の実行段階に入ると話は別。

「細かいところに徹底的にこだわれ」ということになる。

 なぜなら、実行段階では、細かいところが、大きな意味を持ってくるケース、他人の感情を害するケースが多いからだ。

 たとえば、お客様へのプレゼン資料を作成する場合。内容の完璧なプレゼン資料を作っても、お客様の名前が間違っていた。「田中秀雄」さんが「田中秀夫」さんになっていたというケースである。もうこれは最悪だ。

 お客様の名前を間違えることほど、最低のことはない。お客様も表紙を見た瞬間に気分を害し、「なんて奴だ」という顔をする。

 もう、プレゼンの内容で何とか取り戻そうとしても、いきなりマイナス50点ぐらいでスタートすることになるので、いくらリカバっても、せいぜいプラス50点ぐらいの出来にしかならない。

 ここまで最悪でなくても、プレゼン資料の中に誤字脱字がちょこちょこあったりすると、お客様から「こいつ付け焼き刃で資料作ってきたな」と見透かされる。 これもマイナス30点ぐらいからのスタートとなる。

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 以上、本稿では、「限られた時間内で最高の結果を出す仕事術」を各方面から検討してきた。皆さんに採用できそうなものはあっただろうか。全5回の連載をもう一度読み直して、どれか1つ2つでも実行に移せば、スピード仕事術が身につくはずである。

(了)  


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