カリキュラムからビジネスモデルまで――
ミネルバは、あらゆる人に「学び」をもたらす

 本書は教員や学生はもとより、学校経営者や企業の人事担当者、経営企画や新規事業開発、マーケティング担当者まで幅広く参考にしていただけるものだと考えている。

 あなたが教員や学生であれば、最新の情報技術を活用することで従来は実現が難しかった「学習効果の高い授業」がどのように実現されるのか注目していただきたい。

 あなたが学校経営者であれば、ミネルバ大学と自校の運営方法を比べることで、参考にできるものはたくさんある。カリキュラムの設計や教授法、テクノロジーの活用といった目に留まりやすいものだけでなく、意思決定さえすれば数か月後から実施できる、効果的な運営方法のヒントが得られるだろう。

 あなたが学校経営者、あるいは企業の人事担当者であれば、なぜ、当初は東京、京都、福岡が滞在候補地となっていた日本が、最終的にアジアにおける候補地として選ばれず、ソウルや台北に決定されたのか、その背景を知ることで、グローバルに活躍できる才能ある学生を獲得するために必要な要素を見つけるヒントが得られるだろう。それはまた、なぜマッキンゼー、グーグル、ゴールドマン・サックスなどがミネルバ大学のキャリア・オフィスを支援し、アルゼンチン教育省などの政府系機関がプロジェクト学習の機会をこの大学に提供するのかということと表裏の関係にある問題だ。

 さらに、ミネルバ大学が実施しているキャリア育成支援制度は、そのまま企業人事にも応用できる。またミネルバ大学で行われている思考・コミュニケーションスキルの学習効果の見える化は、企業内のタレント・マネジメントにも応用できるヒントが多く隠されている。

 そして、あなたが経営企画や新規事業開発、マーケティングを担当しているのであれば、現在取り組んでいる課題に対して新しい視点を見つけるヒントが得られるだろう。そのヒントは、ミネルバ・プロジェクトがなぜアイデアだけの段階で、西海岸でも最も資金を得ることが難しいとされるベンチャー・キャピタル(ネットオークション最大手のイーベイ、ライディング・シェアのウーバー・テクノロジーズ、オフィス・シェアのウィー・ワークなどに出資)から30億円もの支援を獲得することができたのか、またわずか4年で43万人以上のフェイスブックのフォロワーを獲得し、マサチューセッツ工科大学(MIT)よりも多い受験者数を得ることができたのか、といったことに隠されているだろう。