汗をかかない人は熱中症のリスク大
「無汗症」になる3つの要因とは?

――汗をかかない方がいいと思っている人は多いですが、もし汗が出なければどんな異常が現れる可能性がありますか?

室田浩之教授室田浩之(むろた・ひろゆき)/長崎大学医学部卒業。大阪大学皮膚科学講師、准教授を経て、2018年5月から長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 皮膚病態学 教授。専門は、アレルギー、膠原(こうげん)病、発汗異常症。

 汗が出すぎて困っている人からすると、汗が出ないのであれば面倒でなくていいと思うかもしれませんが、汗が出ないことはさまざまな症状を引き起こすこともあります。汗のメリットが得られないわけですから、当然、体温と皮膚温は上昇しますし、皮膚は乾燥し、さらに病原体への抵抗性が損なわれるでしょう。

 実際に汗が出なくなる疾患、例えば自律神経失調症例では、広範囲のドライスキンと皮膚の温度上昇を伴います。そのほか汗を出すエクリン汗腺が未熟あるいは形成されない外胚葉異形成症の症例ではアトピー性皮膚炎診断基準を満たすようなドライスキンを伴う皮膚炎のケースも見られます。

 また、皮膚温だけではなく体温も調節できませんので、うつ熱(身体の熱の拡散が妨げられ、体温上昇をきたした状態)や熱中症のリスクも上昇します。例えば体重70kgの人が体温を1度下げるためには100ccの汗をかき、さらに皮表から蒸発する必要があるとの試算もあります。

 体温調節に必要な発汗量が得られないと体内に熱がこもり、うつ熱状態になります。うつ熱になると体温調節が難しくなるので、熱中症になるリスクが高まります。熱中症の増加は社会問題となっていますが、この背景には発汗低下も関わっていると考えられます。

――具体的に、汗が出なくなる病気にはどのようなものがありますか?

 汗の出なくなる無汗症の原因は、大きく(1)薬剤や身体的要因、(2)皮膚疾患、(3)中枢神経あるいは末梢神経の異常、の3つに分けることができます。薬剤では多汗症の治療薬として用いられる抗コリン剤が発汗を減少させます。身体的要因としては熱傷や外傷後瘢痕(はんこん)など限られた部位のエクリン汗腺が損なわれる原因が含まれています

 次に汗が出なくなる皮膚疾患ですが、先天性と後天性に分けられます。先天性疾患は無汗性外胚葉形成不全症、ファブリー病などが知られています。後天性皮膚疾患としてはシェーグレン症候群、全身性強皮症、コリン性じんましん、アトピー性皮膚炎などです。