NTTぷらら・板東浩二社長と“エッジがきいた人たち”との対談連載、今回は、2016年に東証1部上場を果たしたメディアドゥHDの創業社長・藤田恭嗣氏に話を聞いた。電子書籍を販売する際のストアシステムやビューアアプリを各社に提供、その普及によって一気に業績を伸ばした同社。藤田氏は、いかに「電子書籍のスタンダード」を創り上げたのか。
名経営者は、絶好調時に
次のビジネスを考えているもの
板東 Windows95の時代から「書籍は電子化していく」という予想がありました。そしてスマートフォンが普及しはじめた2011年ころから、一気に電子書籍が普及していきます。この流れのなかで、貴社はどんな役割を果たしたんですか?
藤田 企業が電子書店を立ち上げる際には、さまざまなものが必要になります。例えば消費者が手軽に購入でき、売れたら出版社に印税を支払うストアシステム、ユーザーが書籍を読むためのビューアアプリなどです。また、各出版社と契約を結び、コンテンツの配信許諾をもらう必要もあります。メディアドゥはこれらをセットで提供しています。
板東 貴社が提供するサービスを使えば、企業は簡単に電子書籍のストアを開ける、と。
藤田 ええ。例えばLINEさんや楽天さんは当社と契約することで、堅牢なストアシステムを自社で築く必要もなく、出版社を一社一社回って許諾を得る必要もなく、電子書籍ストアを築くことができました。その結果、「流通カロリー」が低下するんですね。具体的に言えば、電子書籍の流通に必要な人手や費用が少なくなり、電子書籍ストアも出版社も収益性が高まります。
板東 藤田さんは学生時代、携帯電話の販売代理店を起業されたんですよね?そこからどんな経緯で電子書籍の事業を立ち上げられたんですか?
藤田 元は、大学のサークルで協賛金を集める係になったことが起業に結びついたんです。1990年代後半だったのですが、「携帯電話は普及するよな」と考えていたところ、販売店を運営する企業に行くと「携帯電話を販売してみない?」と声をかけられて…。人脈を使って携帯電話の代理店になってくれる人物を開拓していくと、時代の流れもあってよく売れたんですね。そこで大学卒業後、この分野で起業したんです。ところが数年経つと「このビジネス、長くは持たないなぁ…」という感覚が芽生えてきたんです。
板東 というと?
藤田 起業後、自社店舗を出して販売するスタイルに切り替え、フランチャイズも合わせ30店舗まで拡大したんです。しかしこのころ、大手の商社や通信会社が、「これはビジネスになる」と目をつけて続々と参入し始め、僕は彼らに太刀打ちできるロジックを見つけられなかったんです。
例えば、僕らは100万円かけてやっとスタッフを100人集めたのに、大手さんは同じ額で200人集める、といったことが起きるようになりました。さらに、雇用したスタッフも「やっぱり大手がいい」と転職してしまう。するとマネジメントが疲弊していきます。様々な打開策を考えましたが、どうしても大手の名前には勝てないビジネスモデルだったんです。