NTTぷらら・板東浩二社長と“エッジがきいた人たち”との対談連載、今回は国内におけるディープラーニングのパイオニア企業である「ABEJA」の岡田陽介社長に話を聞いた。小売・流通業、製造業等に続々、AIを導入する同社。岡田氏に「AIで今後メディアはどう変わっていくか」を予想してもらった。
すでにAIを活用した
様々なサービスが世に出ている
板東 世間では「AIは近いうちに人間の能力を超える」「AIによって人間の仕事がなくなる」といったイメージで語られていますね。これは、本当ですか?
岡田 既に一部、人間の能力を超えていると思います。ただし、人間の仕事がなくなることはなく、むしろAIは人間の強い味方です。さらに、SF映画のように人間を攻撃することもありません。
板東 AIの仕組みからお教えください。
岡田 AIは「ディープラーニング(深層学習:コンピューターが物事を理解するための学習方法の1つ)」の出現により、一気に進化しました。簡単に言えば、コンピューターにリンゴの画像を見せ続けると「リンゴならではのいびつな感じ」とか「拡大していくと表面に粒のような模様がある」といった、リンゴの画像に共通して現れる特徴を把握していきます。すると、画像を見せたとき「これはリンゴである可能性が高い」と人間の直感に似たものを持つようになり、最終的には人間より速く正確に「これはリンゴ」「これはリンゴじゃない」と判断できるようになるんですね。
板東 もう世の中の役に立っていますか?
岡田 例えばFacebookに私が友人と一緒に写った写真を投稿すると、コンピューターに「これは〇〇さんではないですか?投稿した写真に〇〇さんをタグ付けしますか?」と聞かれることがあります。これは、AIによる画像解析技術が活用されています。それまでに○○さんが投稿した写真から「これが○○さんの特徴」と把握しているんです。現在は動画からも特徴を抽出できます。
音声からも特徴を抽出できます。例えばスマートフォンの「Google Maps」に「池袋何の何の何…」と住所を話すと、おおむね言った通りに変換してくれます。周波数は1本の線で表されます。AIは、アナウンサーの方が話す「いけぶくろ」、外国人の方が話す「いけぶくろ」、雑踏の中のうるさい場所で方言がある人が話した「いけぶくろ」など、様々な「いけぶくろ」の特徴をつかみ「こう聞こえたら『いけぶくろ』と言っているよね」と判断しているんです。
また、データからも学べます。以前はコンビニの店長さんが30分も1時間もかけて「この時期は豆腐が売れるから、木綿が何丁で、絹が何丁」などと注文していました。しかし販売データをAIに学ばせると「この曜日はお弁当がよく売れる」といった特徴を抽出し、発注作業がボタン一押しになるんです。