「1年全改選」が今でも圧倒的多数を占めるのは、「面倒くさいがとにかく1年だけ我慢すれば、しばらくはお役御免」と考える一般的な区分所有者の意向と、「寝た子をなるべく起こさない」ポリシーの管理会社の意向が、ピッタリとマッチしているからだ。

 最初の大規模修繕工事を迎える前の、築10年程度までのマンションなら、ほとんどの理事はマンション管理組合活動、理事会参加も初めてなので、理事会運営に関しては何の知識もないまま理事会に加わることになる。

 これは管理会社にとっては、大変やりやすい状況だ。フロントマンは「面倒臭いことは嫌だなー」と顔に書いてあるような理事の面々を前にして、「どうぞご心配なく、面倒なことは全て私がお引き受けします、理事会もできるだけ少なめで、短めにしますので、どうか1年だけお付き合いください」と言えば、ほとんどの理事は真に受けて安心する。

 そして、生み出される結果が、これまで連載させていただいてきた数々の頭の痛い問題となるのである。

 新年度に入り、総会で理事会のメンツが決まると、管理会社が音頭を取って第1回の理事会が開かれる。

 その場では右も左もわからなかった新米理事も、問題意識を持つ人なら、3ヵ月ほど経てばなんとなく方向性や自分の立ち位置がわかってくる。

 半年も経てば、課題が何かもわかってくるが、「管理会社に任せてばかりではまずい」と真面目に取り組み始めたところで、任期満了はすぐそこに来ているといった具合だ。

「起きかけた子ども」は起きる前に交代してもらえる「1年全改選」なら、管理会社にとっては「寝ている子ばかりの保育園」のように手がかからず、思い通りの運営ができるわけだ。

 ここで何が問題かといえば、管理組合の主体性を管理会社に奪われるだけではなく、管理組合にとって本当に必要な、何年かにわたって考えていかなければならない長期的視野に立った審議の継続が妨げられ、大切な議題が頓挫してしまうことだ。

 国会でいえば「誰か」の都合で重要な法案が「廃案」になってしまうという事態と同じだ。例えば管理会社に不都合な議題があったとすれば、それを消滅させてしまうことも可能だということである。