【絶版】
「今日われわれが直面している時代について、唯一確実にいえることは、それが乱気流の時代になるということである。乱気流の時代にあっては、組織のマネジメントにとって最大の責任は、組織の構造を健全かつ堅固なものとし、打撃に耐えられるようにすることである。そして、急激な変化に適応し、機会をとらえることである」(『乱気流時代の経営』)
ドラッカーは、中国では昔から、「せいぜいおもしろい目に遭うがいい」と悪態をつくという。人は誰でも平穏無事がいい。おもしろい目になど遭いたくない。
ドラッカーは、今から約30年前の1980年、20世紀末ほど、このおもしろい目に遭う時代はないであろうと書いた。ところが、彼自身も認めたとおり、その後の展開は、あらゆる想像を超えて、おもしろくなる一方となった。
今日この頃では、2~3年ごとの乱気流ではなく、月々、日々の乱気流である。もはや誇張でもなんでもなく、われわれは日々乱気流の渦中にある。「今日なにかあった?」が日常の挨拶となった。.
情報とマネーのグローバル化によって、世界はもはや小さな村と同じである。米国という異国の低所得者向けローンの破綻が津波となって世界を襲っている。人類の歴史上、このようなことは初めてである。しかも、すでに世は、組織からなる社会である。個人が必要とし、社会が必要とする財・サービスのほとんどが組織によってつくられている。加えて、個人が生計の資を得、その能力を発揮し、社会の一員として社会に貢献する場も組織となっている。
その組織が乱気流に翻弄されている。高度一万メートルにあって、そこに働く人たちが機外に放り出されつつある。事ここに至っては、冗談にもおもしろい目に遭えばいいなどとは言えない。
いまやあらゆる組織が自らの構造を健全かつ堅固なものとし、機会をとらえていかなければならない。すでに得られたマネジメント上の知識を駆使して、この乱気流を乗り越えなければならない。しかも、そこにチャンスがある。
これこそが、あらゆる組織にとって最大の社会的責任である。
「乱気流の時代は、新しい現実を理解し、受け入れ、利用するものに対し大きな機会を与える」(『乱気流時代の経営』)