【コツその3】わからなくても「高速」で読む

 先に、リーディング能力が高くなると、それに比例してリスニング力も向上すると書きました。

 とくに、リーディングによって「頭の中で語句や文章を処理していく速度」を上げていくことができれば、リスニング力アップに大きく貢献します。

 ひと口に「リーディング」といっても、さまざまなアプローチがあります。1つのやり方は「熟読」。1行ずつしっかりと読み込んで、わからない単語が出てくるたびに辞書で調べていくのがこの方法です。

 わからない単語を調べ、少し長い文章はスラッシュで区切り、文章の意味がとれなければ、何度も読み返す。文学の奥深さを味わったり、単語の持つ意味をあれこれ考えたりするにはこの方法が最適でしょう。

 しかし、この「熟読」はスピードが遅いので「処理速度」を上げるトレーニングにはなりません。

 それと対照的なアプローチが「速読」です。速読の利点のひとつは、繰り返すうちに、「英語を日本語に訳して理解する」「つねに英語を理解するのに日本語を介在させる」というプロセスを経なくても、「英語を英語のまま理解できるようになる」ことです。

 英語を読むときに「100%の理解」を目指す人にとっては、速読をする際「理解度が下がること」がストレスになるかもしれません。

 しかし、単語ひとつに足踏みして速度を落とすより、速いスピードでインプットしていくことのメリットのほうがはるかに大きいのです。

 速読を繰り返していると、「英語の文字情報を素早く、効率よくインプットする力」がついてきます。そうすると、英語を読むこと自体が楽しくなってくるはずです。単語は類推しながら読み進めることでスピードを落とさず、類推力を鍛えてください。単語帳ではなく、文脈の中でたくさんの単語に触れられるので、生きた単語力も上がっていきます。

 情報処理速度がアップし、単語力がついていくにしたがって、リスニングでもわかる文章がどんどん増えていきます。リーディング力を上げればリスニング力も上がるというのはこういうことなのです。

(本原稿はD・セイン著『最低限の単語力でもてっとりばやく英語が話せる』の内容を抜粋・編集して掲載しています)

デイビッド・セイン(David Thayne)
米国出身。社会学修士。日米会話学院などで約30年にわたり1万人以上の日本人に英会話を教えてきた経験を生かし、数多くの書籍を執筆。また、英語学校の運営や英語学習書の制作を行うAtoZ Englishを主宰。エートゥーゼット英語学校の校長を務めるとともに企業、学校等でビジネス英語、TOEIC、日本文化を英語で紹介する講演会やセミナーを開催。「日本文化を紹介するのは最高のおもてなし!」をテーマにした英語学習サイト「和カルチャーEnglish」(www.waculture.com)も運営している。著書は『日本人のちょっとヘンな英語』(原案。アスコム)、『ネイティブが教える英語の語法とライティング』(研究社)、『英文法、ネイティブが教えるとこうなります』(共著。NHK出版)など累計400万部を超える。