英語で「どうぞ」をプリーズとは言わない理由

中学や高校で英語を習った人なら、たいていそれなりの単語力はあるものだ。にもかかわらず、いざ話そうとするとまったく言葉が出てこなくなるのはなぜなのか?30年にわたって日本人が英語を話すための方法を考えてきたデイビッド・セイン氏が、この問題について、画期的な解決策を考案。そのメソッドを、このたび『最低限の単語力でもてっとりばやく英語が話せる――日本人1万人を教えてわかったすぐに話せる50の方法』にまとめた。
これは、とにかくしゃべれるようになること「だけ」をゴールにしたニュータイプの英語本。
「That sounds...」「I feel like...」「Let's say」など、一番使い回しの効く「最強のしゃべりだしフレーズ50」を厳選、どんな会話でも対応可能の「ネイティブの6つの会話パターン」に沿って紹介している。脳が最も効率的に記憶できる無料ダウンロード音声もついているので、「最短距離」で英語を話せるようになりたいという人なら絶対に必読の一冊だ。以下、その内容から一部を特別公開しよう。

このフレーズひとつで、ぐっとスマートになる

 席をゆずったり、道をゆずったりするときに「どうぞ」と英語で言うなら、あなたは何と言いますか?日本の学校だと「どうぞ~してください=Please」と習うので、とっさに「Please」かな、と思ってしまって、「どうぞ」と言いたいときに「Please」が出てしまう人が多いようです。

 しかし、正解は「Go ahead.」。プリーズを使うと頼みごとのようなニュアンスが出てしまいます。ネイティブは「Go ahead.」を「どうぞ」として本当によく使います。同時に話し始めてしまって相手にゆずるときなど、きまって「Go ahead.」と言います。

 さらに、「どうぞどうぞ」と相手に何かを勧めるときの表現として、「Go ahead and...」のひと言を覚えると、あなたの英語のスマートさは大きく変わります。and の後には動詞が続きます。

 たとえば誰かと食事中、相手の料理が先にテーブルに運ばれてきたら、「Go ahead and eat your food.」(どうぞ先に食べ始めてください)のように言えるとスマートですね。

 please は使っていませんが、決してぶっきらぼうな言い方ではなく、「私にかまわずに」「遠慮しないで」といった相手を気遣うニュアンスが含まれます。べつに命令形だからといってえらそうな命令になるわけではないというのは本書でも説明している通りです。

 では「Go ahead and...」の使い方を見ていきましょう。

こうやって使ってみよう

とても素敵なお家ですね。
This is such a nice house.
ありがとう。お茶を持ってきますので、どうぞおかけください。
Thanks. Go ahead and take a seat while I get tea.

どこへ行くの?
Where are you going?
トイレ。映画、先に見始めていていいよ。
The restroom. Go ahead and start the movie.

あ、私の電話が鳴ってるんだ。
Oh, my phone is ringing.
どうぞ、出ていいですよ。
Go ahead and take it.

どこにいるの?
Where are you?
渋滞にはまっちゃって。私抜きで会議を始めてしまってください。
Stuck in traffic. Go ahead and start the meeting without me.

これについてあなたの承認をいただく必要はありますか?
Should I get your approval on this?
いえ。ファクスで送ってしまっていいですよ。
No. Go ahead and send it by fax.

USB メモリーを私に貸してくれる人はいると思う?
Do you think anybody has a USB drive I can borrow?
どうかな。聞いてみるといいよ。
I don't know. Go ahead and ask.

ポイント:「Go ahead」を加えるだけで、一気に気の利いた言い回しになる

本書ではこれ以外にも、日本人の感覚に沿った、いちばん使いやすいフレーズをたくさん紹介しています。ぜひ参考にしてください。

(本原稿はD・セイン著『最低限の単語力でもてっとりばやく英語が話せる』の内容を編集して掲載しています)

デイビッド・セイン(David Thayne)
米国出身。社会学修士。日米会話学院などで約30年にわたり1万人以上の日本人に英会話を教えてきた経験を生かし、数多くの書籍を執筆。また、英語学校の運営や英語学習書の制作を行うAtoZ Englishを主宰。エートゥーゼット英語学校の校長を務めるとともに企業、学校等でビジネス英語、TOEIC、日本文化を英語で紹介する講演会やセミナーを開催。「日本文化を紹介するのは最高のおもてなし!」をテーマにした英語学習サイト「和カルチャーEnglish」(www.waculture.com)も運営している。著書は『日本人のちょっとヘンな英語』(原案。アスコム)、『ネイティブが教える英語の語法とライティング』(研究社)、『英文法、ネイティブが教えるとこうなります』(共著。NHK出版)など累計400万部を超える。