これらの疑問を考えるには、新聞・雑誌記事のほかに、同社の決算発表資料やアナリストレポートを読み込むことで、ある程度の答えは見えてくるはず。でも、海外に打って出なくてはならないという柳井会長の想い、そのために英語を公用語にしなくてはならないという信念まで理解するには、まだ材料不足です。柳井会長は世界のアパレル市場の現状をとらえ、10年、30年、50年といった将来を見据えて、英語公用語化の決断を下しているはずなのですから。

 そんなジレンマを日本にいながら払しょくするための簡単な方法、それは海外企業の決算資料を読んでみることです。

 一般に海外のほうが、日本に比べて決算書類(年次報告書など)が充実しています。会社は何を目的として経営しているのか? 大切にしている経営指標はどれで、その数字はいくらなのか? 会社のリスクは? 今後の経営方針は? それらをできるだけ平易な言葉を使って理解してもらおうという姿勢が見られます。

ユニクロはどんな海外企業と競争しているか

 では、ユニクロをもっと知るためには、どの海外企業の決算書類を見てみるのがよいでしょう? 次の質問を、皆さんも考えてみてください。

(1)世界で自社ブランドの衣類をもっとも多く販売している小売(SPA=製造小売業)の会社はどこでしょう?
(2)ずばり、その会社の売上はどれくらいだと思いますか?ファストリとの差は?
(3)どれくらいの勢いで成長していると思いますか?ファストリとの差は?

 これらの質問に即答できる方は、世界のアパレル業界によほど詳しい方か、ファストリのアナリストの方かもしれません。

 世界の2大SPAは、H&MとInditexです。最近は日本でも大都市圏で店舗を目にするようになったH&Mは、皆さんもよくご存じでしょう。それに比べて「Inditexって、どこ?」というのが、多くの方々の第一印象ではないでしょうか。では、ZARAと言えばどうでしょう。ZARAを中心にして主要8ブランドのアパレル小売を世界展開しているのがInditex(インディテックス)なのです。