お盆休みで実家に帰省している人も多いはず。久しぶりに家族と顔を合わせるせっかくの機会、相続や不動産などお金にまつわる「実家の大問題」を家族で話し合ってみては?お盆企画の第3回は、急増する「老老相続」で損しないための3カ条を紹介する。*本記事は『週刊ダイヤモンド』2016年8月13日号『どうする実家の大問題』から抜粋したものです。
80代の親から60代の子どもへの「老老相続」を背景に、空き家になる実家は増えるばかりだ。売却や賃貸など善後策を考える前に、相続の落とし穴に注意しよう。
「この家は取り壊して、更地にして売ろうと思うけどいいかな」。長男の寺西浩二さん(仮名、59歳)が、実家の居間でそう切り出すと、2歳下の弟は大きくうなずいた。長らく一人暮らしをしていた母親が亡くなり実家だけが残ったが、2人ともすでに持ち家があるため、この家に住む気はない。
寺西さんの実家は、埼玉県草加市にある小さな一戸建て。東武伊勢崎線の最寄り駅から路線バスで20分ほどの距離にあり、お世辞にも交通の便が良いとはいえない場所だ。
しかも築40年以上たった木造住宅で、更地にしなければとても買い手は現れそうにない。
四十九日の法要を終えた翌日、寺西さん夫妻と弟夫婦の計4人で、実家の中を一通り片づけることになった。
作業開始から1時間後。2階の寝室を整理していた弟が、血相を変えて1階に下りてきた。押し入れの中からほとんど使った形跡のない羽毛布団やじゅうたん、健康食品の錠剤が入ったビンが大量に出てきたのだ。
寺西さんは不審に思い、母親がよく領収書などをため込んでいた棚の引き出しを開けると、そこには聞いたこともないような業者の名前が書かれた、割賦販売契約書が何十枚も入っていた。
契約書の日付を見ると、全てこの半年の間に契約したもので、割賦の未払い金は総額で800万円近くにも上っていた。