かつて建築基準法や各自治体の「空き家条例」に基づいて細々と行われてきた代執行が、空き家特措法施行により、全国の自治体で加速しているのだ。とはいえ、一部の自治体は、真っ向から財産権へ介入することになる、所有者が判明している空き家への代執行には及び腰だ。

 今回の葛飾区の場合は、くだんの空き家の目と鼻の先に京成電鉄本線が走り、また、接道が近隣の公園へ向かう園児の通路となっていたため、「倒壊すれば大惨事になりかねない」(葛飾区)と判断し、代執行に踏み切った。

 解体費用の約180万円については法律通り、所有者である同区在住の70代女性に請求しているが、「今までのところ、明確に支払う意思は見せていない」(同)。もっとも女性には、マンションなど他の資産があるため、その差し押さえを検討中だ。

 危険な空き家を解体させただけでなく、実際に強権を発動したこの代執行の効果は絶大だった。「うちの隣の空き家も壊してほしい」といった区民の“通報”により、区が把握した空き家の数は、16年7月までに368戸にまで膨らんでいる。所有者らに通告したところ、89戸の所有者が自ら更地にするなど、解決につながったという。

 無論、そんな殊勝な所有者ばかりではない。葛飾区は今年中に2戸目の代執行を計画していたが、16年7月中旬、その対象だった建物の所有者から、葛飾区に弁護士の名前で文書が届いたという。

 いわく「空き家ではなく、倉庫である」──。

 これは、空き家問題がより早く顕在化した、地方で横行している“手口”だ。「悪知恵を付けて回っている者がいる」と歯がみするのは、別の自治体幹部。

Illustration by Shin Kikkawa

 代執行に伴い、空き家であることを証明するには、公共料金の支払い状況や、近隣住民への聞き取り調査など膨大な労力と時間が必要となる。「倉庫としても利用実態がないことを再度証明するために、一からやり直さなければならなくなった」と葛飾区は肩を落とす。

 だが、なぜそうまでして、所有者は先延ばしを図るのか。それは特定空き家と認定されることで課せられる税金に理由がある。