平成最後の夏、日本列島は猛暑に見舞われている。7月23日には東京都内で観測史上初の気温40度超、8月3日には名古屋市でも40.3度を記録するなど、全国的な暑さが続いている。そんななか、身近な問題として取り沙汰されているのが、スポーツ現場での熱中症への対応だ。各競技団体では運動を行う際のガイドラインを設け、日中の練習時間、大会催行の制限に乗り出しているが、あまりの暑さに対策が追いついていないのが現状だ。特に話題になっているのが、全国高等学校野球選手権大会、“夏の甲子園”の熱中症対策問題。気温の上昇とともに白熱する議論はどうあるべきか?横浜DeNAベイスターズ初代球団社長で、現在はスポーツ庁の参与を務める池田純氏に聞いた。(構成/大塚一樹)
亜熱帯化する日本の夏
早急で抜本的な対応が求められる
青い空に白球、蝉の声にサイレンと、爽やかな汗を流す高校球児。日本の夏の風物詩といえば、“甲子園”だが、酷暑のなかで連日行われる大会に「危険だ」「選手も観客も熱中症に十分配慮すべき」という声が挙がっている。なかには「ドーム球場で行うべき」「開催時期をずらしてはどうか?」など、100回の節目を迎える大会の根本的な見直しを迫る意見もある。
「近年の日本の暑さは、私たちの経験則では測れないような次元の違う暑さです。ベイスターズで仕事をしていた数年前もすでに異常な暑さを感じることがたびたびありました。ハマスタ(横浜スタジアム)は人工芝ですから、なおさらですよね。昼からの練習ではグラウンドレベルで熱気が球場全体に溜まって、立っているだけでも汗だくになるほどでした。日差しが落ち着いても、ホームのベンチは強烈な西日に襲われるので、すだれをかけるなどして急場を凌いでいました」
池田氏は夏の甲子園の是非、熱中症リスクへの対応策を議論する前に、日本の気候の変化を前提に置かなければいけないと言う。
「“亜熱帯化”というレベルで日本の夏が暑くなることを事前に予測していた人は、そういなかったと思います。ここ数年で異常気象が多発していますが、ここまで多発すると、もはや“異常気象”とは言えませんよね。今後も同様のことが起こるという前提で考えるべきです。夏の暑さに関しても、現状に即した対応が求められますし、実際にそういう対応をせざるを得ないでしょう。こうした前提で議論が盛んに行われることは、基本的には必要なことだと思います」