正直なところ、処方薬の購入に関して、実質的に「一物多価」が存在することについて、今回知って驚いた。健保の自己負担分の値引きは全てが悪い、ということなら、ポイントの形を取るとしても、実質的な値下げ行為はいけないということなのだろう。

 かつて、歯科医師が患者の自己負担分を値引きして、違法とされたケースがある。医師がこうした値引きを行なうことが横行すると、経済インセンティブ上、患者が増えて、保険財政を圧迫する可能性があるから、確かにまずいかも知れない。

処方薬のポイントは自己負担額の1%程度
病院の患者増、建保財政圧迫は考えにくい

 しかし、処方箋に基づいて薬を購入する場合は、すでに購入する数量も、したがって健保の負担額も決まっていて、ポイントがあるからといってただちに購入量が増えて、健保財政の負担が増えるわけではないように思える。

 ただしこれは、医師が患者を正しく診察し、患者の意向に関わらず、患者にとってあるべき唯一の処方を行なうと仮定できる場合の話だ。

 思考実験的には、ポイントの付与が、処方薬購入者の自己負担額の1%程度ではなく、たとえば50%なら何が起こるかと考えてみると、上記の想定とは少し違う景色が見えてくる。

 患者は、実質的な薬価が大幅に安くなるので、軽い症状でも、あるいはほとんど症状が出なくても、病院に行って医師に症状を訴えて、薬の処方を望むだろう。これは、医師のビジネスにとって患者が増えることを意味する。

 こうした顧客の期待に応えて、本当は投薬を必要としない軽い症状に対しても投薬の処方箋を書くことが、医師の得になるという状況が起こり得る。かくして健保財政が圧迫され得る、という読み筋が論理的には可能だ。

 しかし、ドラッグストア・チェーンによる現実のポイント付与が、売り上げの50%であるはずはない。処方薬については、「自己負担額」に対して1%程度にすぎない。これによって、病院の患者が増えて、健保財政が圧迫されるとか、過剰投薬が国民の健康を損なうとか論じるのは、大袈裟だろう。