大阪桐蔭の春夏連覇で幕を閉じた第100回全国高校野球選手権大会だが、今大会はチケットの販売方法が変更された。券を求めて深夜から行列する来場者によるトラブルを予防する目的で、外野席が有料化され、バックネット裏も全席が前売り指定席として発売されている。しかし、それによって別種の混乱も見て取れる。自身も甲子園球場のスタンドに足を運んだ球技ライターの大島和人氏が、新たな問題について検証した。(文/大島和人)
完売していても空席が目立つ第1試合
スタンドに入りたい人がチケットを手に入れられず、チケットを手に入れた人はスタンドにいない――。今夏の甲子園は、そんな大会になっていた。
今大会から、チケットの販売方法が大きく変更された。従来は無料だった外野自由席が有料となり、ネット裏の「中央特別席」が指定・前売り化された。指定券を購入しているファンは、早朝から並ぶ苦労がなくなった。いつ着いても席が確保されているため、第1試合はしばしば「完売しているのにガラガラ」という状況になっていた。
甲子園は酷暑の8月に行われる。したがって日差しを浴びながら3試合、4試合と見続けることは体力的に厳しい。第3試合以降に注目カードがあれば、第1試合は自重するファンが必然的に多くなる。以前から、最初から最後まで真剣に見るファンは多くないのが実態で、昼下がりになればまどろみ始めるお客さんも多くなる。ただ、ネット裏が自由席だった当時は席の確保が「早いもの勝ち」だったため、第1試合がガラガラということはあまりなかった。
もちろん第1試合から大阪桐蔭のような人気校が登場すると、ガラガラにはならない。その代わり第3試合、第4試合のお客が少なくなる。横浜が大会5日目の第1試合に登場したときは、隣のお客さんが残り3試合の権利を放棄して席を立っていた。