今の日本には当てはまらないが、「利下げも利上げも最後の1回は余分だ」といわれる。景気予測の精鋭を集めた中央銀行でさえも、景気の転換点を正しく予測するのは難しいということなのだが、それによって「利益は増えたのに金利は下がったから株価が上がった」といったことが起きるわけだ。

景気絶好調だと増益率は低め

 景気が拡大を続けて絶好調になると、企業の収益は高水準となるが、前年同期も高水準なので増益率は低くなりがちだ。それ以上に「景気が絶好調だと、意外と企業は儲からない」ということが重要だ。

 というのも、景気が絶好調だと企業は設備稼働率が高く、労働者の残業時間も長く、「無理をして生産を増やしている」。設備を無理して長時間動かせば、さまざまなトラブルが起こりかねないし、労働者を残業させれば、疲労で生産性が落ちる一方で残業手当の割り増しが発生する。

 そんなときにさらに生産を増やそうとして、労働者の残業を増やしたりするのは得策とは言えない。労働者を新しく雇ったり、工場を増設したりするのも大きなコストを伴う。

 マクロ経済的にも、景気が絶好調だと企業収益に下押し圧力が生じる。労働力不足になり賃金水準が上がる。金融が徐々に引き締められ、支払金利も膨らんでいく。設備投資用の資材の価格も値上がりする。

 そうしたときに、景気が後退を始めたら大変だ。高い人件費で雇った社員や高い建設費を投じた設備が稼働せず、収益を大きく圧迫してしまうからだ。人々が景気減速を認識する前に減益決算が発表されたら、株価へのマイナスのインパクトも大きい。

 今の米国は、景気が過熱して賃金も設備投資コストも急激に上昇し、インフレ抑制のために中央銀行が引き締めるという状況ではない。したがって、上記したような視点から考えると、いまだ「幸福の中で消えていく」という局面ではなさそうだ。

 しかし、株価は景気だけで決まるわけではないし、筆者は株価予想の専門家でもない。くれぐれも投資は自己責任でお願いしたい。

(久留米大学商学部教授 塚崎公義)