できる人は統計思考で判断する がん検診の精度

「統計思考」とは、統計学、確率論、あるいはゲーム理論や行動経済学をベースに、情報を客観的に分析して適切な判断を行うための合理的な考え方。このたび著書『できる人は統計思考で判断する』を出版したニッセイ基礎研究所主任研究員の篠原拓也氏が、同書の中から、「統計思考」の身につけ方を具体的なケースに基づいて教授する。今回は、がん検診の診断精度を上げることの難しさについて、精度のパーセンテージの面から考えていく。

がん検診の判定は
100%正確なわけではない

「正しい決断」をするためには、「状況を正しく把握する」ことも重要です。

 日常的に関心を持っていることについては、情報の収集や分析がスムーズで、素早い決断ができることが多いでしょう。しかし、日頃、関心が薄い分野では、なかなか状況が把握できず、決断が滞りがちになります。

 たとえば、みなさんの健康や医療に対する行動にもそれがあてはまります。

 近年、医療分野では、病気になる前から健康に気をつける、予防医療や健康増進の動きが活発です。その1つとして、がんを早期に発見するために、がん検診を受検することが奨励されています。

 しかし現状では、がん検診の受検率はなかなか高まっていません。その背景として、がん検診に対する、みなさんの関心の薄さが考えられます。

 どうしたら、がん検診の受検率を高めることができるでしょうか。