子どもの「わかった」は、本当に理解しているということなのでしょうか。「わかった」という段階から、「点数が取れる」段階へステップアップする方法をご紹介します。
46年間、教育一筋――都立中高一貫校合格者シェア52%で業界1位、都立高合格者数1位を獲得した東京都随一の学習塾「ena」の学院長である河端真一氏の最新刊『3万人を教えてわかった 頭のいい子は「習慣」で育つ』が発売たちまち重版。結果を出すことで証明してきた、その教え方・学ばせ方は、まさに、最強にして最高の子育て論であり、塾教師としての立場でできることではなく、家庭にいる保護者ができることをまとめたのが本書です。
本連載では、子どもたちにとって貴重な時間を保護者としてどう接するか、保護者の対応次第で子は変わるということを実感していただき、今すぐできることを生活に取り入れてください。この夏休みからぜひ取り組んでほしいことを、本書から一部抜粋し、やさしく解説していきます。
保護者がやるべき3つのこと
勉強が「わかった」ということと、受験において「点数が取れる」ことは違います。
「学力」=「得点力」ではないのです。
難関高校の生徒にこんなことがよく起こります。難関高校には、その地域でも上位の中学校で、オール5を取っていたような子ばかりが入学してきます。
中学校でオール5を取っていたような子なので、難関高校の授業にも無理なくついていけます。本人も「わかっている」という認識があり、中間・期末テストでもいい点を取れて、優秀な成績を収めることができます。
ところが高校3年生になって全国模試を受けてみると、合格可能性判定は「E判定」。これでは狙っていた難関国立大学どころか、上位グループの私立大学にも受からない。気づいたときにはもう手遅れということに……。
本人は、勉強した内容を100%「わかった」と思っていました。しかし、「わかった」だけでは不十分で、実際の入試となると、自分が思っていた6割や7割しか得点できないことも多いのです。
たとえば、国語の問題で、「たいしょう」という漢字を書く問題があったとします。候補は、対称・対照・対象などいくつもあります。
3つの漢字が書けたからといって、テストで問題が出たときに正しい解答ができるとは限りません。前後の文脈を把握して、どの漢字が適当かを判断する必要があるからです。
子どもの思う「わかった」というのは、対称・対照・対象などの漢字を書けるようになった段階であり、それを使って点数が取れる段階はもう少し先にあるということです。
英語でも同じようなことは起こります。
たとえば、学校の授業で「今日は関係代名詞について勉強します」と言われ、これを習います。
少し勉強のできる子は、そのときに「わかった」と思います。そして、中間・期末テストなどではいい点数を取れます。しかし、入試のときに関係代名詞の問題が出ても、得点できなかったりします。
入試の問題では、それが関係代名詞なのか疑問代名詞なのか接続詞なのか、非常にわかりづらいかたちで英文に紛れ込んでいるからです。
入試では、これまで勉強したことがぐちゃぐちゃに混ざり合ったかたちで問題が出されます。そのなかから答えを導き出すには、特定の単元を理解しただけでは不十分で、総合力が求められるのです。
野球でたとえれば、わかりやすいかもしれません。毎日素振りを行い、誰が見ても理想的なフォームのバットスイングを身につけたからといって、実際の試合でヒットを打てるとは限りません。
ピッチャーの投げる球にタイミングが合わず、前のめり、あるいは振り遅れになってあえなく三振してしまうことも多いのではないでしょうか。
一つひとつの単元は理解していても得点力がないというのは、そういう状態のことを指しています。
「わかった」という段階から、「点数が取れる」段階へステップアップするには、こうすればいいのです。
たとえば、受験学年では、4、5、6月までには徹底的に基礎を身につけることです。そのうえで、総合力を鍛えるために7、8月の夏期講習の時期にシャワーを浴びるがごとく過去問に取り込みます。
過去問をたくさん解くことで、頭のなかで「わかった」と思っていた単元同士が結びつき、総合力がアップし、9月、10月頃になってようやく得点力が向上してくるのです。
また、実際の入試では、限られた時間のなかで、焦りや緊張と戦いながら答案用紙を埋めていく必要があります。急いで書いてケアレスミスがあっては不合格に直結します。そういった精神的なものも含めて得点力を高めていくことが大切です。
子どもが「わかった」と言っても、そこは8合目。9合目や頂上に行くためには、もう一踏ん張りする必要がある、ということです。
【POINT】
子どもの「わかった」という段階から、
「点数が取れる」段階へ進むために総合力を鍛える。