子ども向けの指南ではありますが、これは大人にも通じるところがあります。長期目標は誰でもたてられますが、短期目標は軽視しがち。緊張感や責任感を持って目標達成に取り組むことができる必要な要素を紹介します。
46年間、教育一筋――都立中高一貫校合格者シェア52%で業界1位、都立高合格者数1位を獲得した東京都随一の学習塾「ena」の学院長である河端真一氏の最新刊『3万人を教えてわかった 頭のいい子は「習慣」で育つ』が発売たちまち重版。結果を出すことで証明してきた、その教え方・学ばせ方は、まさに、最強にして最高の子育て論であり、塾教師としての立場でできることではなく、家庭にいる保護者ができることをまとめたのが本書です。
本連載では、子どもたちにとって貴重な時間を保護者としてどう接するか、保護者の対応次第で子は変わるということを実感していただき、今すぐできることを生活に取り入れてください。この夏休みからぜひ取り組んでほしいことを、本書から一部抜粋し、やさしく解説していきます。
「田植えをするときは遠くではなく足元を見ろ」の意味
子どもが「学校の授業はつまらないから行きたくない」と言ったら、保護者としてはどう答えるべきでしょうか。
私の答えは、「つまらなくても我慢して行く」です。
大学時代、夜更かしをして授業に遅刻したり、時にはサボったりと、だらしない生活を送っていた学生も、社会に出たら毎朝きちんと起きて会社に向かいます。そうしなければ会社員として、社会人としてやっていけないからです。
毎朝7時に起き、朝ご飯を食べ、学校に行く。昼になればご飯を食べ、友だちと談笑したり遊んだりする。そして家では明日に備えて、夜更かしせずに早く寝る。そういった生活リズムを身につけることが、小・中・高の基礎教育の役割です。
だから学生のうちは、授業がつまらなくても毎日行かなければなりません。
まず、「毎日学校に行く」という基本中の基本を身につけたら、そのうえで今度は、先生の授業をしっかりと聞くことを覚える必要があります。
授業中は私語をしてはいけないし、勝手に歩き回ってもいけない、宿題を忘れずにやるなど、いろいろなルールを守って学校生活を送らないといけない。これはわんぱく盛りの子どもにとって、なかなか大変なことです。
しかし、我慢しながらもいろいろなルールを守って学校生活を送り、毎日何時間も席について先生の話をきちんと聞くことで、「忍耐力」が養われます。
成績が悪ければ教師や保護者からいろいろと言われて、悔しい思いをすることがありますが、そういった思いを乗り越えて自分なりに問題を解決していくことで、「克己心」も養われます。
学校の授業は、基礎的な忍耐力や克己心を養う場でもあるのです。
部活でも忍耐力や克己心を養うことはできますが、いつでもやめられる部活と違って、小中学校の授業は義務です。面白くないと思っていてもやめられません。
授業がつまらないからといって、先生の言うことを聞かず、宿題もやらないということでは忍耐力・克己心は養われません。そんな子どもが大人になり、社会に出ればどんなに苦労することか想像に難くないでしょう。
集中力がなければ勉強した内容は頭に入らないし、きちんとした生活習慣を身につけなければ社会に出てからやっていけません。バランスを取りつつ両方を身につけさせてあげることが、保護者の役割ではないでしょうか。
忍耐力や克己心を養うためのポイントがあります。それは、「長期目標とは別に短期目標を立てる」ことです。
難関大学に入学する、医師になるなど、小学生のうちから長期スパンで目標を立てている親子はいます。しかし長期目標しか持たないと、結局、何も達成できないで終わるおそれがあります。
長期目標では漠然と大きなゴールを設定しがちで、スタート段階では本当に達成できるのかどうか自信が持てず、途中で嫌になってしまうことがあるからです。
また、目標を立ててから結果がわかるまで期間が長いので、何としても目標を達成しなければという思いを維持することができません。しばらくしたら、目標を立てたことすら忘れてしまうこともあります。
よく、「田植えをするときは遠くではなく足元を見ろ」といわれますが、それは遠くを見ると嫌になってしまうから。足元を見て1本1本稲を植えていけば、広い田んぼの田植えもいずれは終えることができます。
勉強もそれと同じ。「今度のテストで90点以上取る」「今週中にドリルのこの範囲を終わらせる」など、1週間から3週間程度を期限とする短期目標を立てる。そうすればゴールが近いので、緊張感や責任感を持って目標達成に取り組むことができます。
短期目標を立てて行動し、期限が来たらまた新たな短期目標を立てる。それを繰り返すことが、学校の授業のなかで忍耐力と克己心を養うことにつながります。
【POINT】
学校の授業は、基礎的な忍耐力や克己心を養う場。
そして、長期目標とは別に短期目標を立てる。