大人がつくった便利なアイテムが、子どもにとって「毒」になることがあります。また、大人の何気ない行動が子どもにとって、「毒」をもたらすのです。この毒に打ち勝つためには、大人が子どもを守るしかないのです。
46年間、教育一筋――都立中高一貫校合格者シェア52%で業界1位、都立高合格者数1位を獲得した東京都随一の学習塾「ena」の学院長である河端真一氏の最新刊『3万人を教えてわかった 頭のいい子は「習慣」で育つ』がいよいよ発売。結果を出すことで証明してきた、その教え方・学ばせ方は、まさに、最強にして最高の子育て論であり、塾教師としての立場でできることではなく、家庭にいる保護者ができることをまとめたのが本書です。
本連載では、子どもたちにとって貴重な時間を保護者としてどう接するか、保護者の対応次第で子は変わるということを実感していただき、今すぐできることを生活に取り入れてください。この夏休みからぜひ取り組んでほしいことを、本書から一部抜粋し、やさしく解説していきます。

自分の行動が子どもの未来をつくる

 勉強をするということは、一つの道を追究することでもあります。わき目も振らずに突っ走ったほうが成果は上がりやすいといえます。

 わき目も振らずに行くためには、勉強の邪魔になるもの、余計なものを自ら遠ざける必要があります。

 仏道の修行に勤しむ人は、「墨染めの衣」を3枚だけ持ち、草履を履いて、頭は剃髪して、世俗へのこだわりを徹底的に捨てて毎日を送ります。そういう覚悟を持たなければ、仏道を究めることはできないからです。

 アップル社の共同設立者スティーブ・ジョブズも、いつも同じ黒のハイネックシャツにジーンズ、スニーカーという格好でした。

「今日は何を身に着けるか」という選択にいちいち頭を使いたくないから、というのがその理由だったそうです。

 勉強に勤しむ子どももそのまねをするべきとはいいませんが、大事を成し遂げるには小事を省かなければいけないというのは、どの分野にも共通しています。小事へのこだわりはなるべく省く生活をしてみてはいかがでしょうか。

 今の世の中には誘惑があふれています。しかも、それらは子どもにとってとてつもなく魅力的なものばかりです。

 特に問題なのは、スマホ(ケータイ)、ゲーム、テレビです。私はこれらを「三毒」と呼んでいます。三毒をできるだけ子どもから遠ざけてあげる必要があります。

 三毒のなかでもテレビは、最近では見ている子どもは少なくなりました。その代わりに子どもの時間を奪っているのはスマホとゲームです。

 これらは勉強にとって邪魔になるばかりか、中毒性があります。やればやるほどハマっていき、いつもやっていないと落ち着かない状態になります。

 常にスマホをチェックしていないとソワソワしてしまう。空いた時間があればゲームのことを考えてしまう。スマホをいじったりゲームをしたりすることで、精神的な落ち着きを保っている。そういう状態になっている子どものじつに多いこと。まさに依存症です。

 この三毒にハマってしまったら、まともな大人への道は閉ざされてしまうといっても過言ではありません。しかもスマホはイジメにもつながることがあり、要注意です(イジメから子どもを守る話は、第3回「遺伝や才能ではなく、勉強ができる子は環境で決まるとするなら、何をすればいいのか?」をお読みください)。

 しかし多くの保護者は、この三毒を安易に子どもに与えてしまいます。自分の力で這い上がれないような落とし穴に、保護者が自ら蹴落としているようなものです。子どもをダメにする行為なのだと自覚するべきです。

 本来は、保護者が三毒から子どもを守ってあげないといけません。

「情報化社会なんだから、スマホやテレビで情報を得ることは大切だ」という考え方もあるかもしれません。しかし、スマホで勉強に有益な情報だけを収集して、無用な情報は見ないなんて、そんな器用なことができる子どもはいません。

 放っておけば、スマホで友だちとLINEばかりしたり動画を見続けたりすることになります。

 情報があふれる社会だからこそ、とりわけ勉強に集中しなければならない子どもは、外部の余計な情報を意識的に遮断することが大切なのです。

 どうやったら子どもを「三毒」から離してあげることができるか。

 まずできることは、「保護者もできるだけやらない」ことです。

 子どもに「テレビを見ていないで勉強しなさい」と言いながら、自分はソファで横になってビールを飲みながら野球中継を見ている。子どもに「スマホばかりするな」と言いつつ、自分はいつもスマホが手放せない。これではまったく説得力がありません。

 せめて子どもの前では、テレビを長時間見たり、スマホに熱中したりするのはやめてください。

 私の経験では学者、研究者の子弟は、ほぼ例外なく成績優秀です。子どもは保護者の背中を見て育つものです。

 幼い頃から保護者が夕食後、自宅で本を読んだり、勉強したりする姿を見せれば、子どもは同じようにするでしょう。「三つ子の魂百まで」です。

 自分の行動が子どもの未来をつくることにつながります。

 それでも子どもが「ゲームをやりたい」「スマホがほしい」と言ってきたら、きちんと説明して反対するべきです。日常の連絡手段としてやむを得ずスマホを与える場合も、厳格なルールを設けることです。

 子どもには反発されるかもしれませんが、社会の誘惑から子どもを守るという覚悟を持って、三毒から子どもを遠ざけてあげてください。

【POINT】
大事を成し遂げるには小事を省かなければいけない。
スマホ、ゲーム、テレビは子どもの前では気をつける。

<参考文献>
勉強ができる・できないは、遺伝や才能ではなく○○で決まる。

「自ら勉強する子」にするために親ができることとは?<佐藤ママ×河端学院長 特別対談>