こうした現実は、「ゆとり教育の見直し」という単純な議論だけでは、日本の子どもの学力が容易に回復しないことを物語っている。もし何らかの要因により、子どもの学力低下に「学力格差」という構造的な問題が絡んでいるとすれば、日本全体の学力を底上げするために、もっと抜本的な対策が必要になることは言うまでもない。

 では、学力格差が生じる理由は何なのか。背景には、「子どもの学力が家庭の状況に大きく左右される」という現状がある。

 大手進学塾に勤務経験のある男性は、「両親の所得と子どもの学力はきれいに正比例する。これは業界内で“公然の事実”」と明かす。大手塾では、両親の年収や学歴、住む地域などのデータをとることも珍しくなく、そこには所得による学力格差が歴然と見て取れるという。最近では、不況下で社会問題化している家庭の経済格差が、学力格差を拡大させている側面もありそうだ。

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低学力の子どもは親の行動に影響される?

 実際に、家庭の状況によって子どもの学力にはどれほどの開きが生じるのか。これらを関連づける調査は、教育機関でもかなり具体的に行なわれている。たとえば、お茶の水女子大学の耳塚寛明教授らの研究グループが2009年に行なった「家庭背景と子どもの学力等の関係」調査だ。

 同調査では、世帯年収を200万円未満から1500万円以上まで12段階に分け、国語と算数の平均点を調査。この結果、世帯年収200万円未満から、1200~1500万円未満まで、子どもの学力が世帯年収と正比例した(ただし、年収1500万円以上の世帯は、1200万円~1500万円の世帯に比べわずかながら正答率は下がる)。

 これ以外にも、学校外教育支出と学力の関係について調べており、「世帯年収の高い家庭ほど子どもは高学力」であり、「学校外教育支出の多い家庭ほど子どもの学力は高い。そして、学校外教育支出は家庭の経済力と強い関係がある」と分析結果をまとめている。

 一般論として、経済的に余裕のある家は、それだけ子どもの教育にも金銭を投資することができる。これが、世帯年収と子どもの学力が正比例する1つの要因と考えるのは容易だろう。だが、さらに家庭内の文化的教養度、さらに家庭内の教育力が関係しているとも考えられる。

 たとえば同調査では、「子どもが小さいころ、絵本の読み聞かせをした」「博物館や美術館に連れて行く」「ニュースや新聞記事について子どもと話す」「子どもにいろいろな体験の機会をつくるよう意識している」などの取り組みを行なう保護者の元で育った子どもの学力は、高いという結果が出た。