「日本の子供の学力が落ちた」として話題を呼んだPISA(主に先進国の15歳児を対象とする学習到達度調査)で、常に好成績のフィンランド。直近2006年調査では、読解力(フィンランド2位、日本15位)、数学的リテラシー(同2位と10位)、科学的リテラシー(同1位と6位)と、調査対象3分野すべてで高得点をあげている。成果をあげている教育制度の要諦を、フィンランド教育庁の参事官、マルヤ・モントネン氏に聞いた。(構成/「週刊ダイヤモンド」副編集長 大坪亮)

フィンランド教育庁の参事官、マルヤ・モントネン氏

─フィンランドはPISAの成績が過去3回ともいいが、特に2003年と06年は最高位にある。なぜなのか。

 2002年、数学と自然科学の分野において、国全体で教育プログラムを改善した。その効果が、PISAの調査結果に出ていると思う。

 現役の教員が、数千人規模で、再教育を受けた。クラス担当教員は、数学や自然科学の補完教育プログラムを受講した。この好影響は、しばらく持続すると見ている。

 国の危機感としては、大学受験時の物理や化学分野の志望者が、長期的に減少しているということがある。教育プログラムの改善では、この点の対策も打っている。女性の理系志望者を増やそうというものだ。

 具体的には、女児に小学校や中学校段階で、理数系の学問に関心をもってもらおうと注力している。例えば、小学校の5~6年から、物理と化学をそれぞれ週1時間学ぶプログラムを組んでいる。

─教育の方法に、工夫があるのだろうか。

 教育現場では、生徒の学習プロセスを大切にしている。つまり、単に教師が生徒に「教える」だけではなく、生徒が能動的に「考える」「行動する」ように指導する。生徒間で相互作用が生まれることも重視している。