業者登録まで400日超
保険業法が妨げる技術革新

 畑は京都大学で数学を専攻。模試で全国トップを取るような天才肌の学生が集まり、その多くが高度な能力を求められる保険数理の分野に進む中で、畑も同じように保険数理のコンサルティング会社に就職した。

 入社後すぐに、責任準備金の計算システムの設計といった保険会社の根幹を成す業務に携わり、「当初は大きなやりがいを感じて面白かったが、そればかりだとどうしても飽きてくる自分がいた」。

 外資系投資銀行などを経て、再保険会社で商品認可の折衝などを担ったが、大企業ならではのゆったりとした仕事のスピードにもどかしさを覚え、「自分でゼロからやった方が」と起業への思いが日増しに強くなっていったという。

 畑は再保険会社を退職した翌月には、ジャストインケースを設立。設立から3カ月後にはベンチャーキャピタルから資金を調達し、さらに関東財務局に「少額短期保険業者」としての登録を申請するなど、着々と事業化の準備を進めていった。

 だが、問題はその後だった。保険業法による規制の壁が、想像していた以上に高かったのだ。

 畑が当初思い描いていたスマホ保険の姿は、友人や知人同士がつながって小さい集団を幾つも形成しながら、個々の集団の中で保険料や保険金を賄い相互扶助するという「ピアツーピア(P2P)」の形式だった。

 保険金の原資となる保険料を出し合う友人の数が多いほど、保険金請求による影響は必然的に薄まる。そのため、つながる集団の人数によって保険料を割り引く仕組みも取っていた。

 だが、規制当局の金融庁や関東財務局からは「割り引きを受けようと友人を誘うことが、“募集行為”にならないか」「保険料など契約者間の公平性が保たれないのではないか」と、相次いで保険業法上の懸念が示されたという。

 畑は、少短の登録手続きを進める傍らで、保険業法にある「1000人以下の者を相手方とするもの」という適用除外の規定を利用し、試験的にスマホ保険のサービスを実施。利用動向を見ながら、提示された懸念を解消する策はないか当局と議論を重ねたが、整理はなかなかつかなかった。