そして、学生時代の先輩・後輩の間では「呼び方」でも独特な慣習があり、年次が下の人は上の人に対して名前に「先輩」をつけて呼び、後輩は当然のように呼び捨てされています。これが会社に入ると、今度は役職をつけて呼ばなくてはならないというルールとして受け継がれます。

 このように「呼び方」は連日繰り返されることでどんどん意識に浸透していき、上下関係が自然と完成されていきます。問題は、「人の上に立つ」というトレーニングを十分に受けていない人間も、「課長」や「部長」と呼ばれることによって万能感を持ってしまい、役職が下の人間に対して横柄に振る舞うということに何の疑問を抱かなくなってきます。役職が下の人間も「あの人は自分よりも上の人だから…」ということで、大抵のことを受け入れようとしてしまいます。

 グローバル仕事人ならば、この慣習にこそ疑問を持たなくてはなりません。年次が上であることや役職が上位であることと、人として横柄に振舞っていいことには相関関係はありません。こうした日本的な慣習こそ、私はハラスメントに直結すると思っています。

役職が上の立場である人ほど
言動はより「謙虚」であるべき

 もちろん、全ての会社や全ての社員にあてはまることではありません。ただ、助長する可能性は高いと思っています。実際に私自身も、企業に勤めていて役割として組織の長のポジションを与えられているだけであるにもかかわらず、部下に対して全てにおいて自分が優れているかのような言動をする人、人格的な部分まで踏み込んで攻撃する人を何人も見てきました。典型的なのは、自分の成功体験を押し付ける行為です。

「なんでお前はそんなこともできないんだ。俺は20代の頃にはその倍はこなしていたぞ」
「なんでもメールやデジタルツールに頼るなよ!俺が若い頃はまずお客さんに会いに行っていたぞ!」

 こんなセリフは、もし仮に思ったとしても口に出してはいけません。この一言がハラスメントなのではなく、この言葉からハラスメントへの坂道に転がり落ちていきかねないからです。

 自分の考えを押し付けるのは、相手から見れば「自分の考えを伝えにくい」状態になります。そうすると、相手からのフィードバックが返ってこなくなり、自分の考え方や伝え方が適切かどうかを測るための手がかりが失われます。