これを反映して、今回の「働き方改革関連法」の同一労働同一賃金ガイドラインでも、同じ仕事の正社員と非正社員との賃金格差は、各々のキャリアパスの違いで正当化されるとしている(参照:「非正規・正規の格差是正が葬られた働き方改革法案の問題点」)。働き方の違いにかかわらず同一労働同一賃金という理念は、絵に描いた餅に過ぎない。

「学業が学生の本分」の実現に必要な大学教育とは

 就活ルールの廃止で、採用時期の歯止めがなくなると、企業の青田刈りが激しくなり、学生が入学直後から就職活動を考えなければならなくなる。そうなれば大学教育自体が成り立たないという悲観論がある。しかし、それは企業がどのような学生を採用したいかの基準次第である。

 企業側が採用に際して、学生の大学での成績や取得した資格をほとんど考慮せず、ヨコの学歴と一般的な適性検査や面接だけで決めるなら、なぜ採用されたか、なぜ不採用になったかの根拠が不明となる。そうした不透明な基準なら、学生側も「数撃てば当たる」式に、数多くの企業を回るしかない。

 他方で、企業が採用時に、大学生活で勉学や海外経験の実績を積んだ学生を評価する。そうしたメッセージを明確にすれば、学生側にも自己選抜のメカニズムが働く。他方、大学側も学業を疎かにした学生を安易に進級や卒業させない。また、質の高いサークルやボランティア活動も成績に反映させる。「入るは易しいが出るのは難しい」大学を目指すことが、真の学業重視であり、そのためには厳格すぎる文科省の規制改革も必要となる。現状のままで、単に採用時期が早まるだけで成立しない大学教育とは何だろうか。

 中西経団連会長が就活ルール廃止を唱えたことの意義は大きい。これを単なる就活協定の見直しにとどめず、企業の働き方や大学教育の改革に結びつける本格的な検討が必要となる。

(昭和女子大学グローバルビジネス学部長・現代ビジネス研究所長 八代尚宏)