最初から全面的に信じたわけではない。「どうせこのまま闘病してもダメなのなら、試してみよう」という程度の思いだったという。飲み始めたときは、家族にも内緒だった。

 しかし、飲用開始後、がんは再発しなかった。元気に仕事を続けるAさんを見て、周囲のがんを患う友人たちもイソジン牛乳を始めた。時を経て、イソジン牛乳はいつしか、Aさんが闘病を続ける上での大きな心の支えになっていた。

 Aさんの体験は、他の患者がイソジン牛乳を信じるきっかけのひとつにもなっているようだ。

 卵巣がんの患者会「スマイリー」代表の片木美穂さんはたびたび、イソジン牛乳提唱者の医師が実名で送ってくるメールを受け取っている。メールでは、イソジン牛乳は「沃化脂乳液」と名付けられ、「癌組織体を治療する事が出来ると想定される」療法だと紹介されている。そして、「極めて有効な結果を得た」として、Aさんから医師に送られてきた感謝のメールが、体験談のように転載されていた。

「信じる人がいるとは思わなかったのですが」

 そう言いながら、片木さんは2017年9月、イソジン牛乳を信じかけた患者(以降、Bさん)から相談を受けたことを教えてくれた。

 Bさんは関東の60代女性で、卵巣がん患者だった。複数の患者会に所属し、うちひとつのメーリングリストから、提唱者の医師からのメールが回ってきた。そこにあったAさんの体験談が、Bさんがイソジン牛乳で「治る」と希望を持ったきっかけだったという。

提唱者の医師から各患者会などに送られているメールの文面
提唱者の医師から各患者会などに送られているメールの文面 Photo by Tsuyoshi Nagano

 医師のメールは、イソジンを牛乳100ccに1滴の割合で混ぜ、24時間冷蔵庫で寝かせたものを毎日飲むことを勧めている。Bさんもこの説明通りにイソジン牛乳を作ったが、いざ飲もうとして怖くなり、片木さんに電話した。そして、片木さんの助言に従い、飲むのをやめたという。

 記者は2017年11月、片木さんを通じ、Bさんに取材を依頼した。だが、病状悪化のためお受け頂けなかった。飲食不能な状態が何日も続き、回復が見通せない状況だったという。そしてBさんは2017年末、亡くなった。