ただ、所得の再分配を前面に掲げるだけの野党、とくに左派やリベラル派も同じ穴のむじなになりかねないことを自覚すべきだ。

 これだけ格差と貧困が広がれば、再分配政策の重視は当然の主張であり、必要な政策転換のひとつである。だがそれだけでは不十分なのだ。

 ある程度、潜在成長力があった20世紀的枠組みの下では、マクロ経済政策で微調整すれば経済成長の持続可能性が高まるという考え方でよかった。しかし、産業構造の大転換が起きている中で、既存産業の成長力が衰え、これだけ財政赤字を急速に累積させてもGDP成長率は停滞したままである。

 今やICT、IoTとエネルギー転換によって産業構造が大きく転換しようとしている。こういう時代状況の下では、所得再分配政策に組み替えただけでは日本経済は持続可能になり得ない。

 再分配政策重視でやればいいという発想は、しばしば左派やリベラル派のモデルとなってきた北欧福祉国家に対する誤解から来ている。

 バブルが崩壊した1990年代以降、北欧諸国は国家戦略を立てて先端産業に対するイノベーション研究開発投資や起業支援や教育投資に力を注いできた。スウェーデンやフィンランドのIT産業、デンマークの風力発電など自然エネルギー産業、そしていまはノルウェーの電気自動車の躍進などが典型だ。

 経済成長か再分配かの二者択一ではなく、目指すべきは雇用を創り出す経済成長と所得再分配の適切な組み合わせによる政策体系なのである。

 もちろん、経済成長を重視するといっても、規制緩和政策で市場任せでは新しい先端産業への転換は実現できない。前述したように、それは不作為の責任放棄であり、ましてや安倍政権では、構造改革特区や国家戦略特区のような規制緩和政策は利益誘導政治の巣窟と化している。

産業戦略がカギを握る
時代錯誤の「縁故資本主義」

 現代では、新しい産業構造の転換には国家戦略が非常に重要な意味を持つ。

 今のイノベーションの特徴は、プラットフォームとなるスタンダード(標準)が大きく変わると、市場が一変する点にある。レコードからCDへのデジタル転換をはじめ、ウォークマンからiPod・iPhoneへ、固定電話から携帯電話そしてスマートフォンへ、原発・火力から再生可能エネルギーへ、内燃エンジン車から電気自動車へといった具合である。

 こうしたスタンダードの大転換で、政府の果たすべき役割は、かつての国有企業か私企業か、政府か市場かといった古い二分法に基づくものではない。

 新産業のためのインフラ整備、研究開発投資を含む初期投資の赤字をカバーする諸制度、OS(オペレーティングシステム)の選択と制度やルールの標準化、それによる関連産業の誘発、知的産業化と創造性を重視した教育の充実などの分野で、国家の産業戦略が重要になってくる。