今年の1月には、10分間で6台の救急車を受け入れた日もあったという。まさに、息つく暇もない。

 しかも、通常、3次救急では断るのが常識の、自家用車やタクシーで受診する「ウォークイン」の患者も受け入れる。

「ウォークインの患者さんは軽症という思い込みが、医療現場にはありますが、うちの患者さんで統計をとったところ、心筋梗塞や大動脈解離の31%、脳卒中も24%がウォークインでの受診でした。それから去年、タクシーでやってきた患者さんで2名、到着時に心肺停止状態だった方がいました。とりわけ75歳以上の方は、遠慮するんでしょうかね、かなりの重症でも、ウォークインで来る率が高いのです。断れば命にかかわる」(有吉センター長)

 病院が、救急患者の受け入れを断る理由としては「当直医処置中で手が放せない」「病床が足りない」「専門医が不在」等が並ぶ。中央市民病院も当初は患者が殺到し過ぎて対応に困り、「なぜ断らないのか」という不満の声が、看護師を中心にスタッフたちから上がったこともあった。

「不満は、患者さんを思ってのことでした。病床の確保を焦れば、患者さんを追い出すことになる、忙し過ぎてスタッフが疲弊すれば医療の質が下がる、等々の理由です。

 しかし、その都度、私は断る理由ではなく、どうしたら受け入れが可能になるかを考えて、救急医療体制の改善を積み重ねてきました」(有吉センター長)

 以下に、改善の一例を挙げる。

◎病院全体の救命救急センター化

 専従医師23人のほか、脳神経外科や心臓血管外科など常駐する各診療科の専門医、さらには病院にいる当直の医師全員が、必要に応じて救命救急医療に対応する。ほかに、薬剤師や診療放射線技師等も10人以上が当直している。

◎ER制の導入

 ER医とは、老若男女、軽症、重傷を問わず、あらゆる患者の救急初期診療とトリアージ(治療の優先度判定)にあたる救急外来医のこと。患者は実にさまざまな傷病で来院する。ER医は多種多彩な訴えから、これは何科の病気か、内科だとしたら循環器か呼吸器かなどを探り、各診療科につなぐプロだ。

 そしてトリアージは、一刻の猶予もない患者を優先的に救う命綱。ウォークインの患者は全員、受付脇のトリアージコーナーでER医のチェックを受け、重症であると判明した場合には、ただちに処置が施される。

 救急医療体制には、ER制のほか、各科の救急担当医が協力し合って初めて機能する「各科相乗り制」、救急の医師だけですべての外傷を治療し、かつICUでの治療も全部救急が対応し、退院までを診る「主治医制の3タイプがある。

 現状として、一般的なのは「各科相乗り制」だが、「ER制」も増えている。