また、代々医師という医師家庭も多く、女性医師の両親は娘の結婚相手に医師以外を認めないという例も少なくないという。

 そして、医師同士の家庭に子どもが生まれると、一般企業以上に、夫と妻の双方が仕事を調整することが難しい。多くの場合、女性が仕事を調整するか、離職せざるを得なくなる。そうなると、女性が「キャリアを諦めなくてはならなかった」と思い、順調にキャリアを積んで出世する夫に嫉妬や怨嗟を募らせることも一因で、離婚することもあるそうだ。

 医師の母親世代は、専業主婦である場合が多く、夫や子どもや家事を優先している姿を見ていて、男性医師が結婚した女性医師の妻にも同じ「献身」を求めて離婚に至るケースもある。

 岡部さんはさらに、女性医師で出産後も子育てと常勤医としてのキャリアを両立させている人は結婚相手が医師以外の職業であるケースが多いと言う。

「当直中、授乳時間になったら夫に子どもを連れてきてもらうように頼むなど、大変な思いをして育児期間を乗り切るなど、相手が長時間勤務の医師ではなかったから、協力して育児ができたという医師もいる」と話す。

 もちろん代々医師の家庭、医師同士の家庭であっても、それぞれに事情も考え方も違うだろう。医師同士の家庭でうまくいっている例もある。

 ただ、少なくとも、一般企業よりは女性が多様な働き方を選びにくい現場であることは確かだ。そして、もちろんそれは男性医師にとっても同じである。

 現在厚生労働省のもとで、2017年8月から、有識者による、医師の働き方改革に関する検討会が10回にわたって行われており、2019年3月末をめどに最終報告がまとまる予定だ。ここでは聖域となっていた、残業時間の上限がどのように設定されるのかがカギになるだろう。2018年3月末に行われた中間報告では、医師の業務の特殊性を考え、いわゆる過労死ライン(労災認定基準)の1ヵ月100時間・2~6ヵ月の各月平均で80時間を上限にすることについては、慎重に考えるべきという意見が出ている。

 ここで言われている医師の業務の特殊性とは、前回の記事でも指摘した応召義務に基づく「医師は24時間365日医師であるべき」といった医師・患者双方の意識のあり方や、医師自身の生命を預かっているという職業倫理、研修医の期間が労働でもあり、研修や研鑽でもあり、研究でもあるということなどを指す。

 しかし、医師の業務の特殊性といっている限り、患者になる可能性のあるわれわれも含めた双方の意識改革は進まない。長時間労働は正当化され続けてしまうのではないか。