そのため、塾に通っていたものの、「授業がつまらない」との理由で数ヵ月で行かなくなってしまった。そこで周さんは、大学での勉強と生活とはどのようなものなのかを認識させるとともに、明確な目標を持たせようと、知り合いに紹介してもらった家庭教師をつけた。

 家庭教師は、東京工業大学に在学中の学生。子どもが物理や幾何学に興味を持っていたこともあり、家庭教師の話を聞くにつれ、大学での勉強に興味を持ち始めたという。そして決め手となったのは、家庭教師に誘われて足を運んだ東工大の学園祭。興味のあった物理実験を見て、「大学に行って自分もやってみたい」と決意を固めたのだというのだ。

 高校3年生に進級した際には、担任の教師から「こんなところで毎日遊んでても何も面白いことはないよ。本当に面白いのは大学に行ってからだよ。大学に入るのが1年遅くなったら1年の損失だよ」と後押しされて、頭はいいものの勉強嫌いな子どもたちのやる気を出させるために作られた、東大合格を目指す「東大クラス」に編入。一緒に参加した他の生徒との仲間意識も生まれ、懸命に勉強したという。

 周さんは、「無理をせず、本人が楽しさえすれば」というスタンスだったが、将来、自分の努力でしっかりとした判断ができるような子どもに育てたかったと話す。そんな周さんの子どもは、最終的に唯一志願書を提出した東大の工学部に合格したのである。

 中国人は子どもの教育を重視しているため、教育熱心で非常に厳しく、「虎媽(米国でいうタイガーマザー)」と呼ばれる教育ママたちが数多くいる。

 しかし、今回取材した「東大生ママ」たちの教育は、「虎媽」をイメージさせるような「過酷さ」や「粗暴さ」はない。確かに皆、高学歴で教育を重視しているものの、子どもの立場に立って、まるで友達のように子どもと接している。

 その上で、子どもに多くの友達を作らせ、勉強や大学に対する正確な知識を持たせることで、最も良い状況を作り上げ、東大の試験に臨ませている。そこには、日本でいうガミガミタイプの教育ママとはかけ離れた姿があった。

※『東方新報』は、1995年に日本で創刊された日本語と中国語の新聞です。