「彼らの稚拙さには全くあきれてしまう」。ある航空会社幹部はため息をついた。「彼ら」とは関西国際空港を運営する関西エアポートの経営陣のことだ。
9月4日、台風21号により関空に甚大な被害が発生し、8000人の乗客と関係者が空港島に閉じ込められたことは記憶に新しい。高潮が発生して地下の電源装置が冠水し、全館が停電した。加えて連絡橋にタンカーがぶつかり、通信回線が遮断された。
航空会社や関西財界の間で、この大混乱は「想定外の災害」ではなく、「起こるべくして起こった人災」との批判が根強い。関西エアは関空が民営化した2016年4月、オリックスと仏ヴァンシを中心に発足した合弁企業で、「対等経営」の方針の下、両社から同格の経営幹部を置く。その体制に問題があり、“不協和音”が聞こえていたからだ。
この問題が何ら解決されないまま、同30日、今度は台風24号が関空を襲った。同じ轍を踏まないようにと関西エアが断行したのが計画閉鎖だ。防波堤に土のうを追加したものの、抜本的な電源の防水対策は間に合わず、再び冠水する恐れがあったからだ。
計画閉鎖の着想はこうだ。台風通過のピークは5時間程度で、応急処置的な電源の防水対策には準備と撤去でそれぞれ7時間かかる。だからこれらを足して計19時間、滑走路もターミナルも全て閉鎖してしまえば一番安全だ──。