RPAを機能させるには、「IT部門でなく、ユーザー部門がプロジェクトを主導すべきだ」(福原氏)とされる。

 RPAなどデジタル技術を採用するには、先んじて小規模なものを試験的に構築し、その有効性や適合性を検証してから、本格的に導入するかどうかを判断する。POC(概念検証)などと呼ばれるデモンストレーション、トライアルをしてみるのである。

 そして、パイロット導入で手応えを得てから、本格導入に踏み切り、さらに社内の横展開、全社展開を図っていく。つまりは小さく産んで大きく育てていく。

 しかし、実際のRPAプロジェクトでは、その前段階でつまずいている企業が、意外に見受けられる。まず、どんな作業がロボットに任せられるか、その見極めに苦労しているのである。

 RPAのロボットは、ホワイトカラーがパソコン上でマウスやキーボードを使い、こなしている作業を代替してくれる。

 まさにロボットにおあつらえ向きの請求書発行、契約情報入力などの定型事務処理が社内に幾つも転がっているケースなら問題ないが、そうは多くない。ロボットをどんどん広めていこうにも、情報が集まらず、「代替候補」が挙がってこないことがままあるのだ。

 理由は、「ロボットに仕事を取られるのでは」と不安に駆られる社員が協力したがらない、という側面だけではない。

 実のところ最もありがちなのは、自分の仕事、作業の手順などがそもそも文書化されていないケースだ。「業務は生ものなので文書化できない」というのである。以前は文書化されていたが、古くなって使い物にならないこともある。

 そうなると厄介だ。「あらためて、それぞれの社員の頭の中にしかなかったものを書き出す必要があるが、いざやるとなるとかなり苦労する」(吉丸新一郎・KPMGコンサルティングシニアコンサルタント)のである。