ロボットにやらせるには、「どのシステムの何というファイルのどの場所に何を転記する」といったレベルの記述が必要だ。だが、こうした手順書があらかじめ用意されていることはほぼない。
RPAで求められるのは、かなりディープな見える化であり、これを用意するには現場にかなりの負荷を強いる。現場の理解、賛同、やる気なしには前へ進まない。
RPAは、規模の大きいITシステムとは、開発の発想がそもそも違う。
ロボットをいったん作り、作業の分岐や例外の有無などを修正していく。運用後もテストとフィードバックを受けながら、完成度を高めていく方式(アジャイル方式)が採られることが多い。ここもはまりがちな落とし穴だ。
日本企業の中では、「ロボットは入れさえすれば、翌日から完璧に動く」という固定観念がある。アジャイル方式で作り込んでいこうとしても、「ロボットを入れ動かしてみて、何か事故が起きようものなら“どうしてくれるんだ”と猛反発を受け、そこからは全く話が進まなくなることもある」と吉丸氏は指摘する。
ロボットはすぐ完璧には動かない。設定環境の変更などはすこぶる苦手だ。例えば、フォルダーの名称の違い一つでも動かなくなったりする。意外とデリケートで手間がかかる。
そんなロボットを職場に迎え入れ、効果的に付き合っていくにはどうすればいいか。
福原氏は「しばらくやらせてみて、何か間違いがあったらそのたびに直していく。手もかかるが、使いこなせば力を発揮してくれる“新入社員”と思って接するといい」とアドバイスする。
新入社員ロボットを、動かすだけならすこぶる簡単。技能は不要だ。ただ、IT部門にばかり頼らずに、日々ロボットの世話をし、メンテナンスをしていくとなると、一定の技能が求められる。「ExcelのVBA、マクロをまあ扱えるレベルであれば、世話ができるというイメージ」だという。
現業部門の「世話役」がいれば、新入社員も心強いのは間違いない。