エドガー・シャインは画期的な著書『組織文化とリーダーシップ』(Organizational Culture and Leadership、1985年)で組織文化という概念を構築し、組織文化に関する多くの研究を行なった。彼はまた、現在では頻繁に使われるようになった「心理的契約」「キャリアアンカー」という言葉を造り出した。
人生と業績
現在はマサチューセッツ工科大学(MIT)スローンスクールの経営学名誉教授であるシャイン教授は、長く傑出した学究的キャリアを誇っている。
彼はハーバード大学より社会心理学の博士号を取得し、MITでダグラス・マグレガーと一緒に研究活動を行ない、全米教育訓練研究所(NTL:National Training Laboratory)で長年働いた。さらに、組織開発、キャリア開発、組織文化の分野で、支援や補助を提供するさまざまな専門職の発展にも大きな貢献をした。
シャインは個人や組織の行動に影響を与える要因について幅広く研究し著作をしている。彼の研究の底流にある主要テーマは、組織における文化の理解、組織文化と個人行動の関係、組織的学習にとっての組織文化の重要性である。ダグラス・マグレガーは、朝鮮戦争終結に伴う戦争捕虜の帰還に関するシャインの研究を踏まえ、シャインをMITに呼び寄せた。この帰還兵の研究はシャインのキャリア全体に強い影響を与えており、1999年に「ラーニングオーガニゼーション」誌(Learning Organization)に寄せた洗脳と組織的説得術に関する論文で再び取り上げ、説得力のある論理を展開した(「エンパワーメント、威圧的説得、組織的学習:これらは関連があるのか」(Empowerment, coercive persuasion, and organizational learning: Do they connect? 6巻4号)。
思想のポイント
●組織文化
研究を始めて間もない頃、シャインは勤務態度やモチベーションを理解するためのそれまでの手法について次のように感じた。まず第1に、組織における個人の経験の多様性が過度に単純化されていること、第2に人間や組織の要求は、人によって、場所によって、ときによってばらつきが大きいことを考えると、限定的すぎることである。シャインは『組織文化とリーダーシップ』で、組織文化を定義し組織において文化が支配的な力を持つことを示唆した最初のマネジメントの理論家になった。