---------医療関連機器メーカーの事例--------

前職が大企業のカスタマーサービス部の部長という、非常に手強いクレーマー(60代男性)がいた。

彼の標的にされたのは、医療関連機器メーカー。ある日、同社のお客様相談室にフリーダイヤルで電話がかかってきた。

「オタクの健康機器に不具合がある。どうしてくれる?」

オペレーターは、お詫びをして商品情報を聞き、現物の確認のために訪問するか、返送してもらうことを願い出た。すると、男性は「返送? そんな選択肢はあり得ない。ここに取りにきて、謝罪するのが筋だろう」と一喝した。

「企業の姿勢として、クレームが入ったら、なにを差し置いても対応しなければならないはずだ。いまから5分以内に、担当者から折り返し電話がほしい」と言い放ち、一方的に電話を切ってしまった。

担当者は30分後、男性に電話をかけた。折り返し電話が遅れたことをお詫びすると、男性はオペレーターの対応の悪さや社員教育について説教を始めた。

「一次受付の対応が悪いな。ワタシの健康への気遣いがまったくない。だいたい、教育システムはどうなっているんだ?」などと延々30分に及んだ。

「健康機器の不具合は、おおげさにいえば、命にも関わる大問題だ。担当役員を同伴して、すぐに来なさい」

これを聞いた担当者は、さすがに即答できなかった。

「申し訳ございませんが、役員と同伴で今すぐというわけにはまいりません」

「それなら、どうするつもりなんだ!」

担当者は口をモゴモゴするが、その間、男性はひと言も発しないまま沈黙している。

担当者の緊張はますます高まった。

そして次の瞬間、「はっきりしろ!」と怒声を浴びせられた。

(了)

こうした、クレーマーが仕掛けてくる「沈黙」には、どう対処すればいいのでしょうか?

それは、こちらも沈黙で応じることです。相手が急に押し黙ったら、こちらも沈黙するのです。そして、相手が沈黙を破るのを待ちます。

相手が5秒間沈黙したら、こちらは10秒間黙るのです。最初は難しいかもしれませんが、徐々に慣れます。

そして「オイ、聞いてるのか!」と言われたら、「はい、聞いております」と、即座に切り返します。すると、相手のほうが焦ってきて、脈絡のない話になっていくはずです。

これで形勢は逆転するのです。

『クレーム対応「完全撃退」マニュアル』では、このようなクレーム事例をふんだんに紹介しながら、対面・メール・電話あらゆる場面における正しい対応法、ネット炎上を鎮火させる方法、高齢化に伴い増加している「シルバーモンスター」の実態と対策など、クレーマーの終わりなき要求を断ち切る23の技術を余すところなく紹介しています。

ぜひ、現場で使い倒していただき、万全の危機管理体制を整えた上で「顧客満足」を追求してください。

(参考記事)

老獪クレーマーの恐るべき手口「沈黙」を利用して相手の心を折る話術

「半殺しだよ」→「怖いです」
「SNSで拡散するぞ」→「困りましたね」
究極のクレーム対応“K言葉”の活用術