増え続ける過払い金返還請求に喘ぐ消費者金融業界。その流れがさらに加速しそうな新たな2つの火種がくすぶっている。時効を認めないとした最高裁判決と、情報機関への登録についての金融庁の圧力だ。このままでは過払い金返還請求はさらに増え、消費者金融業界は存続できなくなるだろう。
「なんで30年前の売り上げを今頃になって返せと言われなきゃいけないのか……」
1月22日、最高裁判所が中堅消費者金融の東日本信販に下した判決に対し、消費者金融業界からこんな恨み節が聞こえてくる。
理由は、この判決によって過払い金返還請求の消滅時効が事実上、認められなくなったためだ。これまで消滅時効については下級審によって判断が分かれていたが、ついに最高裁が結論を下した。
争点は何だったのか。以下、順を追って説明しよう。
まず債権の消滅時効は、民法167条により10年と定められている。となれば、利息制限法の上限金利(15~20%)を超えて支払った利息(過払い金)は、支払ってから10年経過すれば請求できない。
そこで問題となっていたのは、いつの時点から消滅時効がスタートするのかという“起算点”。一般に消費者金融でおカネを借りる場合はリボルビング契約を結び、一定の枠内で借り入れと返済を繰り返す。そのため、起算点がいつになるのかわかりにくい。
この起算点をめぐって消費者金融と債務者は真っ向から対立していた。起算点がいつになるかによって、返還請求の対象期間が大きく違ってくるからだ。
たとえば、15年にわたって消費者金融から借り入れと返済を繰り返した後、返還請求をした場合はどうなるか。
直近の10年分は返還するが、それより前の5年分は支払わないというのが消費者金融側の主張。