(5)多段階プレゼンテーション作戦 

 これは、戦略策定から計画策定、実行にいたる行程を何段階にも分けたうえで、順番に成功するための基準を提示し、それが確保できないことを徐々に明らかにし、最終的に「無理」であることを示す作戦だ。いわく、

 この意思決定を実行して成果を生むためには、第一にこれこれのデータが必要で、これができることを実証する必要があります。

 →実証は済みましたが、その結果から、これこれの可能性が引き出されたため、これについて別途検討する必要があり、そのためには××を確保する必要があります。

 →××を検討した結果、さらに細かくA、B、Cを調達できるかどうかが成功の鍵になることがわかりました。ABCのうちAは調達できましたが、Bは入手できるかどうかが五分五分、Cは現状では極めて困難です。全力を尽くしてBとCの調達を目指します。

 →BCについて調達を試みた結果、Bを確保するには追加で○○億円が不可欠であり、Cについてはいまだに目途が立っておりません。経営幹部の皆さまにおかれましては、Cの調達ルートに心当たりのある方はおられませんでしょうか。ぜひご協力を仰ぎたいのですが……。
 
 といった具合である。基本的に、成功のために“最大限の努力をしている”という態度を前面に押し出しつつ、成功に至る要因を明確化したうえで、時間をかけ、困難度の高さや追加資金の必要を説き、「このプロジェクトはやっぱり難しいよな」という空気を組織内に醸成していくのである。

 歴史のある有名企業で、このプロセスを見事に実施して、筋の悪い意思決定を結局無効に導いた人を見たが、この人は組織のなかで、どうすれば摩擦なく意思決定を覆すことができるかを熟知していた。人と組織に関する洞察力が高い人であり、その後も見事に出世した。
 
 本来は、そもそも愚かな意思決定が行われないような組織にしていくことが肝心である。しかし、長い会社員生活の途上では、このような意思決定に巻き込まれることはあるし、不幸にも当事者になることもある。こうした際には、ただ不幸を嘆いていてもしかたがない。上記のような策を駆使して、上手に逃げ切ってほしい。そうしたスキルを磨くこともまた仕事のうちである。健闘を祈る。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山進、構成/ライター 奥田由意)