IC乗車券に処理スピードは劣るが…
鉄道事業者がQRコードに期待する理由

 しかし、新幹線や航空機であればともかく、日常的な鉄道利用を全てSuicaなどのIC乗車券に切り替えるのは現実的ではなく、鉄道の完全チケットレス化達成は容易ではない。まずは磁気券だけでも廃止したいのが本音だろう。海外の地下鉄では、切符の代わりにICチップを埋め込んだトークンを発行し、下車時に回収して再利用する事例もあるが、他社と直通運転を行う日本の事業環境では難しい。そこで注目されているのがQRコードだ。

 沖縄都市モノレール(ゆいレール)は2014年、北九州モノレールは2017年に、ICカードの導入と合わせて磁気券を廃止し、切符の券面にQRコードを印刷したQR乗車券を改札機の光学センサーで読み取る方式に切り替えた。IC乗車券がカバーできない領域をQRコードに置き換えて、まずは「磁気券レス化」を実現した格好だ。

 さらに、ゆいレールは今年7月から自動改札機で、中国のQRコード決済サービス大手「Alipay(アリペイ)」に対応するサービスの実証実験を行っている。これはスマホで決済して、画面上のQRコードを改札に読ませる仕組み。日本でも、スマホ利用のQRコード決済が普及すれば、本当の意味でのチケットレス化が近づいてくる。

 日刊工業新聞が7月に報じたところによれば、JR東日本は来年度に実施するSuicaのシステム更新で、QRコードを使用した入場にも対応する計画だという。筆者が知る限りでも、10年ほど前から鉄道総合技術研究所でQRコードを利用した改札システムの研究が行われており、磁気券を廃止するための下準備は着々と進行している。

 誤解されることがあるが、認証速度で劣るQRコードが日本の通勤ラッシュに最適化されたICカードのシステムに取って代わることはあり得ない。

 QRコードはこれまでのSuicaではカバーできなかった領域を補完して、役割分担をしながら、ICカードとともにチケットレス化とキャッシュレス化を推進していくことになるだろう。