行き場のない人々の「終の棲家」
辿りついた住居に命を奪われる

 この検討会の背景の1つは、困窮の果てにたどり着いた住処によって生命を奪われてしまう事例の数々だ。

 2009年、群馬県渋川市の高齢者入所施設「たまゆら」で火災が発生し、高齢者10名が死亡した。死亡した10名のうち6名は、東京都で生活保護を利用していたが、都内の施設に空きがないため群馬県の施設に入所していた。他県の施設も利用するしかないほど、東京都の高齢化問題が深刻化していることは、火災とともに世の中を驚かせた。

 その後も、同様の施設火災は相次いでいる。2015年5月、川崎市の簡易宿泊所で火災が発生し、10名が死亡した。2018年1月には、札幌市東区の共同住宅で火災が発生し、11名が死亡した。いずれのケースにおいても、建物が違法改築された結果として火災に弱い構造となっていたり、防火対策に不備があったりした。

 入居者や死亡者の多くは、生活保護で暮らす高齢者や障害者など、通常の賃貸住宅に受け入れられにくい人々であった。無料低額宿泊所は、あくまで住居がない人々の一時的な住居だ。しかし、障害や疾患や多様な困難を抱えている人々は、「通常の民間アパートで暮らしたい」と望んでも受け入れられにくい。その場合、無料低額宿泊所に年単位で居住し、そこを実質的に定住先や「終の棲家」とすることになる。

 この現実を踏まえ、「無料低額宿泊所」という制度を基盤として、インフォーマルなサポートを含む多様な支援を提供している事業者もいる。2018年1月の札幌市の共同住宅も、そのような居住の場だった。「そこしか行き場がない」という人々が、その住まいに生命を奪われるのは、あまりにも残酷すぎる。何らかの対策が必要なのは間違いない。とはいえ、「スプリンクラーさえあれば」という単純な問題ではない。