そうこうしているうちにAさんは体調が悪くなり、Sマネジャーの上司に「しばらく休みたい」と伝えました。しかし、上司のヒアリングに対しSマネジャーは、「自分の業務が多過ぎる」と言うばかりで、「Aさんの対応はやるだけやっている」の一点張り。さらに、自分はお客様から頼りにされていて忙しいという話を、酔いしれるようにしていました。

 こんなSマネジャーの問題点は何だったのでしょうか。

ラインケアを知ることが
解決の第一歩

 筆者が、産業カウンセラーとして管理職へのカウンセリングや研修を行うとき、メンタルヘルスにおける「4つのケア」のうちの1つ「ラインケア」を意識するように伝えています。

「ラインケア」とは、管理監督者による職場環境の改善や、個別の指導や相談のことです。

 今回の事例の場合、Sマネジャーは、自分の仕事に忙殺されすぎて、Aさんのメールの内容をさらっと確認しただけで、Aさんが出しているSOSに全く気づきませんでした。

 本来、ラインケアについては、研修などを受け、正しい知識を持っていただくことが理想ですが、難しく捉えずに、ラインケアを行う第1歩となる方法もあります。

 例えば、今回の場合、Sマネジャーが、すぐにメールの返信をするだけでも、Aさんへのラインケアに進展があった可能性は否めません。なぜなら、Aさんにしてみると、「すぐに返信してくれる」という安心感が、「相談しやすい環境」への入り口となるからです。

 一方で、部下の立場の方にも、「セルフケア」という概念が必要です。「セルフケア」とは、自らストレスを予防することや、ストレスへ対処するための行動(活動)です。上司から手を差し伸べられるのを待つだけではなく、自らもアクションを起こすことは重要です。